採用の仕事は、いまだアナログである。そのプロセスの大半が採用担当者の主観に依存しており、偏見やバイアスの介入で適切な人材を逃すだけでなく、差別的な採用も見られる。筆者らは、人材採用に人工知能(AI)を取り入れることで、候補者の能力を客観的に見極めて、人間の意思決定の質をより高めるべきだと主張する。


 候補者の採否を決定するために、アルゴリズムがその人の写真をデータマイニングする――これほど不気味なことはないと思われる。しかし、そのような話は、まったく非現実的なシナリオではない。さらには、人々が想像するほど不気味でもないかもしれない。

 まず、どの組織も人材の発掘と能力評価に苦心している。このため、組織の多くで重要な役職の適任者が見つからないという不満の声が上がり、大多数の人が、熱意を持てるというには程遠い仕事にやむなく就いている。

 世界一の経済大国である米国では、人材マネジメントの慣行が、どの国よりもはるかに科学的で洗練されている。その米国においてでさえ、労働市場はかなり非効率的であることを考えてほしい。現在の米国には、700万もの求人数があり、およそ600万の求職者がいる(訳注:組織では人材が非常に不足しているうえに、現在の仕事に満足していない人も多い)。

 最高の経歴と専門技術を有する知的エリートたちから成る、グローバルな知識経済圏(リンクトインの登録者でいえば約5億人)を見ても、仕事に満足している人は標準的ではなく例外である。これらの有能人材のうち推定70%が、別の、できればもっと意義または面白さを感じられる仕事やキャリアに転職してもよいと考えている。

 他の経済圏における求人・採用プロセスは、さらに遅れている。

 採用元のマネジャーがハードスキルを過度に追い求め、より重要で不可欠なソフトスキルに目を向けていなかったり、直感頼みでバイアスのかかった採用方法を取ったりする。たとえば、体系立っていない面接で誰を採用するかを決める、などだ。その間、予測的な分析やデータ主導のツールは有効活用されていないことが多く、偏見やバイアス、差別の横行が至る所で見られる。

 要するに、人材の見極めを、より効率的に、そしてより能力主義的に行いたければ、従来の方法を超えたところに目を向け続けることが重要である。候補者について予測、理解して、仕事にマッチさせることが、技術革新によって大規模に展開できる場合にはなおさらだ。