内田良氏教育問題を積極的に発信している内田良氏

 2015年、大阪・八尾市の中学校で起きた崩落事故により社会問題となった「巨大組み体操」。事故を機に見直しが進み、実施校数は激減した。しかし近年、学校現場では再び段数を上げる傾向にあるという。教育社会学者・内田良氏が著書『学校ハラスメント』(朝日新書)でも指摘した、復活の兆しをみせる「巨大組み体操」。なぜ学校はやめられないのか、内田氏が考察する。

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巨大組み体操ブームは過ぎ去ったはず…

 今春の運動会シーズンは、巨大組み体操の話題をたびたび耳にした。
全国的には、巨大組み体操はすでに過去のものになりつつあっただけに、「まだやっているの?」と感じた人も多いことだろう。

 2016年3月のこと、組み体操における負傷事故の多発を受けて、スポーツ庁は「組体操等による事故の防止について」という通知を発出した。これにより全国一斉に、組み体操指導の見直しが進んだ。

 日本スポーツ振興センター刊『学校の管理下の災害』の各年版を見てみると、組み体操による事故の件数は、集計が公表されるようになった2011年度から2015年度までは8千件規模であった。それが、通知が出された後の2016年度に約5千件、2017年度には約4千件にまで減少した(図1)。

全国の小中高における組み体操の事故件数(2011~2017年度)全国の小中高における組み体操の事故件数(2011~2017年度) 拡大画像表示

一時の全国的な巨大化ブームは過ぎ去ったと見ることができる。