「ギグエコノミー」という言葉の流行に象徴されるように、特定の組織に所属せず仕事をする人が増えている。それは、より自律的かつ柔軟な働き方を実現する一方、会社員時代とは異なる課題に直面することもある。フリーランスになったら無視できない、基本的な課題とは何か。また、成功するためにはどんな能力が必要なのか。筆者らは、3つのマインドセットが重要だと説く。本記事では、あなたの現状を評価するためのチェックリストも提示する。


 仕事は刺激的で、毎日が新鮮です」と、ヘンリー(仮名)は我々に語った。

 ヘンリーは生物学の博士号を取得したが、学界でのキャリアを離れ、科学関連のコンサルティングビジネスを自力で立ち上げた。独立して働くことに、彼は大半の時間を夢中になって過ごしている。

 だが、いくつかの課題にも突き当たったという。仕事量が予測不可能なこと、経済的に不安定なこと、クライアントの期待と要求が食い違うこと、などだ。

 組織で働けば、所属意識やアイデンティティ、相対的な安定、そして明確なキャリアパスを得られる。しかし多くの人が、ヘンリーのように、独立して働くことを選択する。

 クラウドソーシング・サービス大手のアップワーク(Upwork)が最近行った調査によれば、米国のフリーランス労働人口は過去5年間で370万人増加した。2018年には、米国人の3人に1人以上が何らかの形で独立して働いていた計算になる。

 より多くのプロフェッショナルが、より高い自律性や柔軟性、コントロール感を「ギグ」ライフスタイルの魅力的特徴として挙げ、従来型の組織でのキャリアから抜け出す選択をしている(「ギグ」と聞くと、リフト〔Lyft〕やタスクラビット〔TaskRabbit〕を介して雇用される労働者を連想するかもしれないが、世界中のギグエコノミーの多くは、知識労働者とも呼ばれるナレッジワーカーやプロフェッショナルで構成されている)。

「ギグワーカーになる」ことで、プロフェッショナルの仕事経験がどのように変わる可能性があるかについては、まだほとんどわかっていない。ヘンリーのようにスキルの高い働き手が独立して働くことを決めたとき、そのメリットと課題は何か。フリーランスとして成功するには、どのようなスキルが必要になるのか。

 我々はそうした疑問を解明するため、経営コンサルティングファームのエデン・マッカラム(本稿執筆者の一人の職場)、およびロンドン・ビジネススクールと協力して、オンライン調査を実施した。欧州と北米のフリーランス・コンサルタント307人と会社勤務のコンサルタント94人を対象として、「仕事でどのような経験をしているか」「どのような能力が、より大きな成功と満足につながるか」を尋ねた。

 我々がサンプルとしたフリーランス・コンサルタントによれば、ギグワーカーになったことが、よりよい仕事、生活、そして報酬につながっている。

 彼らの多くが、「クライアントのために、より質が高く、知的にやりがいのある仕事、すなわち従来型のコンサルティング会社でやっていた仕事と比べて、より大きなインパクトとより優れた価値があり、実施される可能性がより高い仕事をしている」と回答した。回答者の一人は、「ギグワーカーになる醍醐味は、プロジェクトと仕事仲間を自由に選べること」とコメントした。

 これらのフリーランス・コンサルタントは、会社勤務のコンサルタントよりも、ワーク・ライフ・バランスへの満足度もはるかに高かった。自分の時間を社内政治などではなく、本当に重要なこと、すなわち顧客のためによい仕事をすることに使っていると、考えていた。

 しかも、金銭的にもメリットがあった回答している。具体的には約67%が、(年間勤務週は少ないにもかかわらず)常勤コンサルタント当時と同額、あるいはそれ以上を稼いでいると回答したのだ。

 また、ギグワーカーになれば、男女間の賃金格差が劇的に縮小することを示唆する結果も得られた。調査回答によれば、コンサルティング会社勤務の女性は、同様に常勤の男性よりも給料が約30%低かった。一方、フリーランス・コンサルタントの場合、女性の日給は男性よりもわずかに3%低いにすぎなかった。

 ミレニアル世代もフリーランスの仕事を「稼げる」と実感しているようだ。実際、会社勤務当時に比べて、71%が「より多く稼いでいる」、13%は「稼ぎは同程度」と回答した。

 もちろん、独立して働けば、現実的な課題にも直面する。回答者の一人の言葉を引用すれば、「誰にでも向いているわけではない。やりたくないと思う人もいるであろうトレードオフが多くある」

 調査結果から、自己管理上の4つの課題が明らかになった。以下に示そう。