やってみたい仕事だったのに、自分は応募資格を満たしていないからと諦めた経験はないだろうか。その代わりに、即戦力で活躍できる仕事を選び、入社のときから成長のない日々を過ごしているとしたら、いますぐに切り替えるべきだ。筆者は、自分の力を過小評価する「インポスター症候群」から、成長のために学び続ける「グロース・マインドセット」へと転換し、新しい仕事にチャレンジする重要性を説く。


 大学生の読者の中には、就職に役立ちそうな科目をいくつか選んで勉強したという人も多いに違いない。しかし残念ながら、そう思って受けた講義で修得したスキルは、仕事で成功するために必要なスキルのほんの一部にすぎない。そのことが、就職活動を難しくしている可能性がある。

 新卒や未経験者向けの求人を見ると、応募要件に聞いたことのないような言葉がたくさん並んでいることがあるだろう。たとえ、あなたが学校で身につけた専門技能に関係した仕事であっても、その会社があなたの知らないツールや、授業では教わらなかった工程を採用している可能性は大いにありうる。

 しかし、そしてここが重要なポイントなのだが、応募資格を100%満たしていないからといって、応募してはいけないということはない。

 拙著Bring Your Brain to Work(未訳)にも書いた話だが、大学を出たての私の長男は、ある会社の、普通なら数年の経験者が就くような仕事に応募するチャンスを与えられた。相談を受けた私はこう答えた。「逆に条件を全部クリアしているような仕事を受けるのでは、目標が低すぎるよ」

 結局、長男はその仕事に受かった。学ばなければいけないことは山ほどあるが、うまくやっているようだ。

 企業は、その業務や役職の未経験者(特に採用したての人材)に、実務を通じて一人前に成長することを期待する。質問をどんどんぶつけ、指導を仰ぎ、多少の失敗もしながら仕事に慣れてほしいと思っている。

 だからあなたも、チェックリストのすべてにチェックを入れられる仕事ではなく、自分を鍛えて伸ばしてくれる仕事を探すべきなのだ。

 だが多くの人は、資格要件を余裕で満たせる仕事ばかりを探している(特に女性)。それには良い面もある。即戦力になれるため、会社に喜ばれ、自信もつく。しかし、大きな成長は見込めないし、そこで行き詰まるとステップアップが難しくなる。

 とりわけ人並みに昇進したい人は、常に次のポジションで求められるスキルを習得し続けなければならない。だが、自分の能力を下回るいまのポジションでは、日常業務の中で学習を積み重ねるということができないため、勤務時間外に努力するしかなくなる。