2019年4月、武蔵野女子学院中学校・高等学校から校名を変更して共学校となった。何よりも変化したのは、その教育内容だ。その前年度から日野田直彦氏が校長に就任。仏教教育の伝統を受け継ぎながら、既成にとらわれない学校づくりに挑戦している。

日野田直彦校長
「僕のことは、日本人の顔をした外国人だと思ってください」。少年時代を海外で過ごし、世界に幅広いネットワークを持つ日野田直彦校長は、そう語り始める。
同志社大学を卒業後、民間教育や私立学校設立などの経験を積んだ後、2014年に最年少で大阪府立箕面高校の民間校長に就任。シリコンバレーの手法を取り入れたボトムアップ型の学校改革を進め、就任3年目に多数の海外大学進学者を輩出した。その手腕を買われて、18年に武蔵野の校長に就任。今、生徒や教員たちと一緒に、既成概念にとらわれない“未来の学校”づくりに取り組んでいる。
「そもそも何のために学校は存在するのか。本校は、“自分で人生の舵(かじ)を握り、力を付けて世界を救う勇者になりたい、世界に貢献したい”という気概を持つ生徒を世に送り出したいと考えています。言葉を換えれば、自分にしかない価値を持ち、その価値を世界に提供できる人間。その目標のため、生徒たちの自由な発言が生かされる心理的安全性が担保された学びの場を用意し、失敗を楽しんでチャレンジする機会をたくさんつくっています」(日野田校長)
マインドセットに変革を
もたらす授業を展開
世界で活躍するために英語力は必要だが、それ以上にマインドセット(物事に取り組む基本姿勢)を大切に考えている。具体的には、さまざまな差異や相手の価値観を受け入れる多様性、自分の立場と思いを発信するために必要な“自分とは何か”という哲学、そして問題が提示されたら暫定解を素早く出す心構え。「これまでの日本の学校教育に欠けていたもので、本校では生徒全員が積極的に参加するインタラクティブな授業によって、世界に通用する考え方や行動様式を自然に身に付けていきます」と日野田校長は語る。
英語教育に関しては、日本で育った普通の生徒が、TOEFL iBTⓇ(海外大学で信頼されている英語資格試験の一つ)でハイスコアを取るためのプログラムを作成。外部企業との連携でオリジナル講座を共同開発するほか、音声認識の専門企業と提携、AIやICTを導入した新たな英語教育を展開する。また海外有名大学による説明会を随時実施するほか、MIT(マサチューセッツ工科大学)への海外短期研修を行い、本物の起業家と出会って社会課題を自分ゴトとして捉える起業家精神も養う。
「本校では、教員と生徒が対等な関係を築き、生徒が主役となって学校活動をしていきます。いずれ生徒には学校経営にも参画してもらう予定で、すでに校則や行事をリデザインするプロジェクトが動き出しました。生徒たちには自由な発想で臆することなく発言し、オーナーシップを持った学校生活を送ってほしいと思います」と日野田校長。スピード感ある学校改革が、生徒のマインドセットに変革をもたらし、成長を加速させている。

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