「iPhone(アイフォーン)」発売10周年モデルの開発期限が迫っていた2017年1月のある日、アップルのソフトウエアデザインの幹部はサンフランシスコの会員制クラブ「ザ・バッテリー」に集まっていた。  彼らが呼ばれたのはクパチーノにあるアップル本社から約80キロ離れた場所だ。その目的は最高デザイン責任者のジョニー・アイブ氏に10周年記念モデルで計画されていた機能を説明するためだった。当時、アイブ氏はサンフランシスコの自宅から会社に来ることはほとんどなくなっていた。  その日の会合をよく知る関係者によると、約20人のデザイナーはアイブ氏が姿を見せるまで約3時間待たされた。