情報共有をオープンにすれば「既読問題」は簡単に解決

 一方で、ほかのコミュニケーションツールを使う場合を考えてみます。先ほどのメールのやりとりと同じケースの場合、コミュニケーションツール上にプロジェクトに関する掲示板を作り、メンバーを招待します。各メンバーはコミュニケーションツールにアクセスし、誰もが掲示板に意見や情報を書き込んだり、参照したりできます。

ほかのコミュニケーションツールの場合
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 さらに、この掲示板を特定のプロジェクトメンバーだけでなく全社員が閲覧できるようにしておくと、プロジェクトメンバー以外の人から思わぬ意見が書き込まれることもあります。例えば、過去に似たプロジェクトを担当した別のチームの人からアドバイスがもらえるなどです。コミュニケーションの場を共有することで、メールという「1:1」を想定した一方向的なツールにはないメリットを得られるのです。もし、特定の人に対して通知をしたい場合は、宛先を指定(メンション)することも可能です。そして、掲示板上ではこのプロジェクトに関するすべてのやりとりが集約されていきます。メールのように一通ごとに情報を送り合うのではなく、掲示板のようにやりとりの場を集約していくことで、「メールを送った、送らない」「見た、見てない」という問題は解消しやすくなります。

 これは、情報共有をオープンにし、個人ではなくチームで成果を生み出すことに注力した結果です。多様なメンバーでチームが構成されれば、それだけ異なる意見やフィードバックを得る機会が増え、自分たちが想定していた以上の成果を生み出すことにもつながります。

 実際にサイボウズでは、社内のプロジェクトやメンバー向けにメールを使うことはなく、キントーンのようなコミュニケーションツールを積極的に使っています。

KPIは「楽しくない」から作らない

「KPI(主要業績評価指標)やノルマがないって本当ですか?」

サイボウズ式編集長の藤村能光氏
サイボウズ式編集長の藤村能光氏

 サイボウズ式のメディア運営でよく驚かれるポイントです。サイボウズ式ではKPIやノルマを特に設けておらず、メンバーの自主性に任せて企画を立ててもらうことを重視しています。

 編集長である僕は、SNSのリアクションやシェア数などサイボウズ式の各種数字を見ていますが、数字自体をKPIとして扱うことはほとんどありません。企画を実現した後に数字を使って振り返りをするぐらいで、特に評価の際に個別に数字を介したコミュニケーションはしてきませんでした。

 KPIは、扱い方を間違えると劇薬になりかねません。確かに、KPIを設定すると記事の本数が増え、メディアの規模はスケールアップするかもしれません。ですが、拡大する代わりに抜け落ちるものが出てくるでしょう。

 サイボウズ式を立ち上げた当初の目的は、「サイボウズを知らない人に、サイボウズを知ってもらうこと」でした。会社の認知度の向上です。これを実現できるのは、オウンドメディアだけではありません。製品開発、販売、人事、お客様サポートなど、さまざまな部署の企業活動によって、認知度が上がっていきます。

 つまり、メディア運営は認知度向上のひとつの要因でしかないということです。そのひとつの要因でしかないメディアの数字を厳密に目標設定しても、認知度向上との因果関係が見つけられなければ、KPIの設定自体が間違っていることになります。

 なによりKPIを介したやりとりは楽しくありません。数字の達成はもちろん大事ですが、サイボウズ式のような兼務中心の社員が集まってメディアを運営する場合は、編集部のメンバーが「楽しい」といった気持ちを前面に出し、「これだけは絶対に読者に伝えたい」という思いを持って企画に取り組んでもらうほうがいいと考えています。結果として、読まれるコンテンツができ、SNSでのシェア数など共感を表す数字を伴ったいい成果につながっていくことも経験上わかっています。