2015年度に女子校を共学化、いち早く相互通行型授業を取り入れ、英語教育とサイエンス教育に力を入れる三田国際。インターナショナルクラスの人気に加え、最近は医療系進路も見据え、本格的な研究者マインドを育てるMSTクラスにも注目が集まっている。

今井誠教頭・広報部長
今春、三田国際の中学入試で大きな動きがあった。2019年度に新設された中学のMST(メディカルサイエンステクノロジー)クラスに、志願者が殺到したのだ。定員は30人だが、出願者数は約15倍。66人が合格し、最終的に男子女子合わせて40人が入学した。MSTは、高校のMSTC(コース)への準備段階のクラスという位置付けにある。
「MSTでは医療系進路を見据えた学びも行いますが、決して医学部に進学するためのクラスではありません。日々の授業の中で、“疑問→仮説→実験→考察”という論理的思考のプロセスを習慣化し、崇高な研究者マインドを身に付けることを一番の目標としています」
今井誠教頭は、MST新設の理由をそう説明する。
博士号を持つ教員が理科教育を指導

三田国際のMSTが注目を集める理由は、「理科好き」を育てる充実した環境にある。校内には二つのサイエンスラボがあり、大学の研究室レベルの設備・機材を整備している。特筆すべきは、教員に博士号を持つ指導者をそろえていること。現在も大学や理化学研究所で研究を続ける第一線の研究者が、理科の学びの本質を初歩から教えてくれるのだ。
MSTではサイエンスリテラシーの授業があり、2年次からは問題解決のための実践的アプローチ「基礎研究α」が始まる。この研究活動は高校のMSTCで行う「基礎研究β」へと発展的に引き継がれるため、4年にわたって一つの研究を続けることも可能だ。
MSTCでは、すでに本格的な研究活動が行われていて、昨年12月に開催された中高生のための学会「サイエンスキャッスル2018関東大会」では、抗生物質の研究に取り組む微生物採取班の「薬のもとを作り出す微生物の探索」がポスター部門の優秀賞に選ばれた。これに先立つ7月には、女子生徒の「水素ガスを用いた微生物培養系の開発とその評価」がサイエンスキャッスル研究費Honda賞に採択され、研究費助成を獲得している。

フルタイムのネイティブ教員が21人在籍
サイエンス教育と並ぶ三田国際のもう一つの看板は、英語教育だ。同校は中高にインターナショナルコースを持ち、こちらも近年人気が高く志願者を増やしている。
中学のインターには、帰国生が多い「Advanced」、英語の学習歴を問わない「Standard」、中間に位置する「Intermediate」の三つの授業クラスがあり、ホームルームは英語力に関係なく編成されている。特徴的なのは、オールイングリッシュが基本の「Advanced」の生徒でも、志望進路に合わせて数理社の授業を日本語で受けることが可能なこと。

「帰国生は高い英語力を維持しながら、日本の学校ならではの教育環境で学ぶことができます。一方、入学後に英語を始める生徒は、日々“英語のシャワー”がある環境で基礎からしっかり学べるため、速いスピードで英語を習得できます。実際に中1で英語をゼロからスタートし、1年間で英検準2級に合格した生徒もいます」(今井教頭)
フルタイムのネイティブスピーカーの教員は21人在籍し、中高全てのクラス・コースの授業に関わり、学校行事や進路指導にも参加、生徒それぞれの学習歴に応じた実践的な英語力を育成する。
そうした環境は、本科やMSTの生徒の英語力が向上する理由にもなっている。

本科クラスに“算数1科目入試”を導入
他校に先駆けて「相互通行型授業」を実施してきた同校にとって、教員から投げ掛けられる“トリガークエスチョン”は、もはや日常の風景だ。一度思考を始めた生徒は、受け身の姿勢に戻ることなく、問題の本質を深く考え、自然に知識を吸収していく。
「本校では、AI時代を生き抜くためには、文系・理系問わずに物事を論理的・科学的に考え、理解できる数理的な思考が大切だと考えているため、19年度から、本科クラスで“算数1科目入試”を開始しました。本科でも、研究者たる姿勢を身に付ける“基礎ゼミナール”のプログラムがあり、この入試で入学した生徒たちには、その研究活動をけん引してもらいたいと期待しています」(今井教頭)


15年の改称と共学化から5年目を迎えた三田国際。同校の教育内容に共感する志願者は増え続け、偏差値は急上昇。最上位クラスの中高一貫校、付属校との併願者も多くなった。志願者のレベルが上がる中、教育内容はますます充実している。
http://www.mita-is.ed.jp