未来の食事食の未来はどうなる? Photo:PIXTA

視野を広げるきっかけとなる書籍をビジネスパーソン向けに厳選し、ダイジェストにして配信する「SERENDIP(セレンディップ)」。この連載では、経営層・管理層の新たな発想のきっかけになる書籍を、SERENDIP編集部のシニア・エディターである浅羽登志也氏がベンチャー起業やその後の経営者としての経験などからレビューします。

自分の手で「食べものを作る」喜びは
未来にも存在するのか

 私の趣味は「食べるもの」を作ること、と周りによく言っている。

 すると、たいていは「料理をするんだ」と思われる。確かに料理もよくする。だが、私が趣味と公言しているのは、その上流の過程だ。つまり「農業」である。

 この連載を熱心に読んでくださる方ならご存じかと思うが、私は今、田舎で暮らし、農場を借りて野菜や米を作っている。さらに最近では、自家栽培の大豆で豆腐をこしらえたり、みそや納豆といった発酵食品にも手を出し始めたりしている。

 自分でやってみて身にしみて分かったのだが、作物を育てたり、発酵させたりといった「食料作り」には、たいへんな労力と時間がかかる。自分でやり方を考えてもそうそううまくいかないので、先人のさまざまなノウハウも学ぶ必要もある。

 でも、楽しい。自作した食材を、日々の食事でいただくのは最高のぜいたくだ。また、遠くから訪ねてきた友人や知り合いに、自作の食材で作った手料理をふるまえば、それが、他では得られない、あたたかな「おもてなし」になる。

 しかし、そのような食料作りが、すべて機械で、例えば「3Dプリンタ」を使って、どこでも誰でも手軽にできるようになったとしたらどうだろう? 同様の「ぜいたく」や「おもてなし」ができるのだろうか。