「傷ついている」ことを
家族が理解する

『「首尾一貫感覚」で心を強くする』(小学館新書)、舟木彩乃著、221ページ。
『「首尾一貫感覚」で心を強くする』(小学館新書)、舟木彩乃著、221ページ。

 次に、「密室化」と「リミットセッティング」を対処法として使うポイントをお伝えします。

・大前提として、引きこもり状態になっている本人は「傷ついている」こと、今の状況に満足していないことを、家族が理解することです。⇒ 部屋から一切外に出なければ心が傷つくことはないので、「今の安全な環境」を維持することに執着しているということを理解します。

・その上で、家族は「家庭内暴力を絶対に容認しない」という姿勢を貫き、暴力に屈するのではなく毅然とした態度で接することです。⇒ この「リミットセッティング」を、家族間で共有しておく必要があります。

・子どもが引きこもり状態になったら、両親だけでも早い段階でひきこもり地域支援センターなどの外部機関に相談することが重要です。⇒ 精神疾患のおそれがある場合も含めて、子どもに対する適切な対応法を身につけておきます。正確な情報を収集することが不可欠です。

・家族を被害者にしないためにも、そして子どもを加害者にしないためにも、暴力が激しい場合には警察へ通報することや、一時的にシェルターなどに避難することも必要です。⇒ 警察へ通報する「リミットセッティング」を、本人も含めた家族間で共有しておくことが重要です。

・子どもが暴力以外の方法で家族に意思や要望を伝えたときには、その声に耳を傾けるべきですが、本人の要求をすべて受け入れることは危険です。⇒ 常識とかけ離れた考えや要求であっても、本人の話を否定したり、遮ったりせず、誠意を持って聴きます。その上で、かなえられない要求については、丁寧に無理な理由を説明する必要があります。

 私自身が河野さんのケースで相談を受けたのは、すでに結婚して別居している河野さんの妹さんからでした。妹は、年老いてきた両親が引きこもり状態の河野さんから激しい暴力を受けているのを、実家に帰る度に目にしていました。両親には外部機関への相談や通報を提案しましたが、世間体を気にしてかたくなに拒んでいたそうです。

 しかし、最終的には第三者である専門家が間に入り、暴力がひどいときはシェルターなどを利用して物理的な距離を置き、今では暴力が許されないという状況が醸成され始めているそうです。

※本稿は実際の事例に基づいて構成していますが、プライバシー保護のため個人名は全て仮名とし、人物像や状況の変更などを施しています。