寄付金を見当違いの宛先に送ってしまったことを知ったマッカイさんは、「国境の壁の1インチ分の費用にでもなれば、と思っていた」と語った。1000ドルあれば牛1頭の代金の半分にもなったのに、と彼女は言う。「これからは、もっと注意しないと」

 ロイターの調査によれば、新たに発生した壁建設費用の調達キャンペーンに出資しようと財布の紐を緩めた米国民は全部で33万人以上に達している。こうした資金調達キャンペーンには壮大な計画がつきものだが、具体的な成果はほとんど出ていない。

 これまでのところ、最も目につく効果といえば、ニューメキシコ州東部に、ボラード・フェンス(柱を並べた形状の障壁)が半マイル(約800メートル)にわたって新設された程度。「壁」資金調達キャンペーンのなかでも最大規模の組織が建設したものだ。

 そのプロジェクトでさえ、法令上の壁に悩まされている。一方で、「壁」にあやかった記念品を作る企業や失敗に終わった政治行動委員会(PAC)が、一部の顧客や寄付者の落胆を招いている。

 もっとも、こうした取組みが十分な「壁」を実現していないにせよ、支援者のなかには「何の後悔もない」という声もある。

「民間の組織が実際に壁を完成させられるとは期待していない。私が願っているのは、こうした取組みが他の政治家や政府に影響を与え、このような運動があると示すことだ」と語るのは、オハイオ州で情報テクノロジー関係の仕事に就くリチャード・ミルズさん(68)。彼は資金調達キャンペーン2つに400ドルを寄付したという。

「壁」建設費用をクラウドファンディングで

 政府のアナリストらは、2000キロ(約1300マイル)以上にわたる「壁」を追加して国境を封鎖する必要性について懐疑的だ。2016年の議会調査部による報告書は、フェンスや障害物を増やしていっても効果は逓減していき、設置・保守のコストは増大していくと結論づけている。

 そもそも、建設費用そのものが膨大だ。国土安全保障省の内部報告によれば、216億ドルだ。

 それにもかかわらず、「壁」を増やすことを望む熱心な支持者からの出資を募るため、いくつかの資金調達キャンペーンがスタートしている。

テキサス州エルパソの選挙集会で、「壁を建てよ」「壁を完成させよ」と書かれたプラカードを掲げる人たち
テキサス州エルパソの選挙集会で、「壁を建てよ」「壁を完成させよ」と書かれたプラカードを掲げる人たち。2月11日撮影(2019年 ロイター/Leah Millis)

 ロングアイランドにある貯木場の総支配人を務めるレイ・ニュルンベルガーさんは、結婚資金を貯め、最初の子どもの養育費を準備する一方で、この1年間で3つの「壁」資金調達組織に300ドル以上を寄付した。