ホジソン保安官はクレーマー氏に対し、保安官協会はすでにDHSに働きかけており、煩雑な手続きを突破できる可能性があると話した。11月、ホジソン保安官は「ファンド・ザ・ウォール」に代わってDHSに申請書を提出した。ロイターが閲覧した書類には、10万ドルをDHSに寄付するとして、「(同省は)この贈与を、米国の南の国境上の障害物(たとえば壁)の建設にのみ用いることができる」と明記されている。

 DHSは、外部からの贈与を処理する部署ではこの書類を確認していないとして、「寄付の状況について提供できる情報は何もない」と述べている。ホジソン保安官は、状況を確認するために改めてDHSに連絡を取ると話している。

成功例「ウィー・ビルド・ザ・ウォール」

 さて、ナーンバーガーさんはさらに100ドルを別の「壁」資金調達キャンペーンに寄付している。こちらは、2018年12月にクラウドファンディングサイト「ゴー・ファンド・ミー」で立ち上げられたプロジェクトだ。

 この取組みは当初「We The People Will Fund The Wall(我ら市民が壁の資金を出す)」と名乗っており、負傷により両脚・片腕を失って米空軍を退役したブライアン・コルフェッジ氏が主宰するものだった。コルフェッジ氏は以前、右派メディアサイトを運営する企業を経営し、数百万ドルを稼いでいた。同氏の「壁」資金調達キャンペーンは、トランプ氏の選挙対策本部長だったスティーブ・バノン氏やカンザス州の元州務長官クリス・コバチ氏など著名な移民反対派による後ろ盾を得て、1ヵ月間で2000万ドルを集めた。

 当初、コルフェッジ氏は集まった資金を政府に寄付すると宣言していた。だが1月になって彼は「ゴー・ファンド・ミー」のページの説明文を更新し、民間建設業者と契約して独自に「壁」を築くことに決めたと発表し、資金調達キャンペーンのタイトルも「ウィー・ビルド・ザ・ウォール」に変更した。

「ゴー・ファンド・ミー」の規約では、このような場合、寄付者は自らの出資分を返金してもらえることになっていた。だが1400万ドル分に相当する大半の寄付者は、そのまま資金をコルフェッジ氏に委ねた。新たに1100万ドルの寄付も集まり、現在の調達額は2500万ドル以上に達している。

 5月末、コルフェッジ氏はプロジェクトの最初の成果を明らかにした。ニューメキシコ州サンランドパーク市の米・メキシコ国境近くの民有地に、鉄製のボラード・フェンスを建設するという。コルフェッジ氏は着工式典でテープカットを行った。

 コルフェッジ氏によれば、この「壁」には約750万ドルの費用がかかったというが、ただちに難題に直面した。サンランドパーク市当局が、同プロジェクトが正式な許可を得ていないとして工事停止命令を発行したのだ。これに対してコルフェッジ氏は数千人の支持者に対し、サンランドパーク市当局は麻薬カルテルと共謀していると主張し、建設の継続を認めるよう市当局者に圧力をかけるよう呼びかけた。

 その後2日で市当局は、建築基準をすべて遵守することを条件に、強引に建設許可を下した。サンランドパーク市の当局者はコメントを拒否している。

 この「壁」の長さは半マイル(約800メートル)で、サンランドパーク市に近い国境を完全に封鎖するには至っていない。映像には、数マイル先で移民が国境を越えている様子が映っている。