ジュリア・ホワイトJuila White/米スタンフォード大学卒業、ハーバードビジネススクールでMBA取得。2001年にマイクロソフトに入社。Office事業のゼネラルマネジャーなどを経て、15年よりコーポレートバイスプレジデント Photo by Hiroyuki Oya

王者のAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)に、マイクロソフトはどう対抗していくのか。Azure事業の責任者を務めるマイクロソフトのジュリア・ホワイト・コーポレートバイスプレジデントを直撃し、戦略を聞いた。(ダイヤモンド編集部 大矢博之)

1000人以上の大企業のシェアは
AWSとほぼ同じ60~65%

――クラウド市場のシェアはAWSの方が大きいです。

 AWSは最初のクラウド事業者です。他社よりも5、6年早くビジネスを始めたことで、珍しさもあってその恩恵を享受できました。AWSがAzureよりもシェアが大きいのは、われわれよりもスタートが早かったから。でも、成長率を見てください。事業を始めてから“同い年”のAzureとAWSを比べると、Azureの成長率の方がはるかに大きいのです。

 現在のAzureビジネスの成長をうれしく思っています。このまま成長を続けていけばAWSに追い付けるでしょう。また、従業員1000人以上の大企業に限れば、AWSとAzureのシェアはいずれも60~65%とほぼ同じ水準に達しています。マイクロソフトやAWSの重点分野では、AWSよりも浸透している領域もあります。

――Azureは競合とどう差別化していくのですか。

 Azureには非常にユニークな機能があります。私が思うに、顧客が重要視しているのはハイブリッドです。データセンターとエッジ側の端末のハイブリッド、パブリッククラウドとのハイブリッド……。われわれはアプリケーションとコンピューターが分散していくと信じていました。ローカルで動くものもあれば、クラウド上で動くものもある。こうした環境から最高のユーザー体験につながるアプリケーションが生まれると考えたのです。ですからわれわれがAzureを始めたときは、ハイブリッドを念頭に置いて構築しました。

 こうした環境では、ローカルサーバーやクラウド、OS、データとあらゆることをセキュリティー上の考慮に入れねばなりません。AWSや競合のクラウド事業者は、クラウドの世界のことだけを見ていて、ハイブリッドについてはあまり考えていないように感じます。最近になってようやく、Azureに多くの機能や可能性があり、顧客のビジネスを改善した実績があることが知られてきました。われわれには、ローカルのサーバーの技術とクラウドの技術の両方を提供してきたユニークな経験と能力があり、顧客の反響も大きい。現在はエッジ側の成長が顕著で、また海外とのハイブリッドの引き合いも強いのです。

 もう一つの重要な要素は、マイクロソフトへの信頼です。一つ目はセキュリティー。われわれはサイバーセキュリティーに年間10億ドル近く投資しています。企業のコンプライアンスや各国のセキュリティー基準の認証という観点で、われわれは競合よりも多くの認証を獲得しています。

 二つ目はテクノロジープロバイダーとしての信頼です。われわれは小売業者とパートナーを組みますが、小売業への参入はせず、競合しません。ヘルスケアや銀行業、自動運転なども、マイクロソフトの事業としてはやりません。われわれは、自分は何が得意かを知っています。われわれは各分野のエキスパートと一緒になって変革の手助けをしたい。こうした信頼が、顧客がわれわれとのビジネスを競合よりも快適に感じる理由でしょう。