この20年でビジネス環境は急激な変化を遂げているが、多くの企業がそれに適応できないまま市場を去っていった。いま求められているのは、成長マインドセット(グロース・マインドセット)があり、いかなる変化にも適応できる人材である。筆者は、スタートアップの初期メンバーは、その典型だという。彼らから学ぶべき5つの教訓を示す。


 S&P(スタンダード&プアーズ)500社の平均年齢は、1950年代の60歳に対し、現在は20歳。つまり、成功している企業は、かつての3倍のペースで成長していると言える。

 この急激な変化の中で成功するためには、従業員と経営幹部が新しいスキルを学び、柔軟性を歓迎するなど、成長マインドセット(グロース・マインドセット)によって変化に適応する必要がある。一昔前は、安定と長期計画が健全な戦略のしるしだったが、いまは適応力が新たな競争優位をもたらす。

 適応力の必要性は目新しい話ではないが、誰でも簡単にできるわけではない。この20年あまり、多くの大企業進化に失敗し、利益や市場シェア、収益性が落ち込んで、破滅的な結末に至ったケースもある。

 進化できる企業と苦戦する企業の違いは、突き詰めれば、誰を雇うかということだ。

 基本的に、成長マインドセットを持つリーダーは、知性と成功は習得できるものだと考える。それに対して、硬直マインドセット(フィックスト・マインドセット)の持ち主は、知性や成功は不変的な性質であり、自分でどうにかできる余地はほとんどないと考える。

 大企業の業績が次第に不安定になる中で、成長マインドセットを持つリーダーは適応力がはるかに高く、変化を推し進め、周りも自分と同じように適応できるよう背中を押すだろう。これこそ、今日のビジネスで成功するために必要なスキルだ。

 喜ばしいことに、適応力は学んで伸ばすことができる。そして、ある特定のグループの人々が、私たちすべての手本になるだろう。そのグループとは、成功したスタートアップの初期の従業員だ。

 特に、私が「ファースト・ハイヤーズ(first hires:最初の従業員)」と呼ぶ人たちは、創業初期に参加して、買収やIPO(新規株式公開)などの出口戦略が成功するまで働き、その成功に有意義な貢献をしている。大半のスタートアップに共通するペースの速い環境で、ファースト・ハイヤーズがどのような振る舞いで成功するかを理解すれば、私たちも自分の組織で実践するためのヒントを得られるだろう。

 私は1年をかけて25人のファースト・ハイヤーズに話を聞き、50人以上のベンチャーキャピタリストや学者、起業家、企業のリーダー、スタートアップの初期の従業員について調べ、さらには自分の経験を考察した。私はゼネラル・アセンブリーというスタートアップの初期の従業員であり、現在はマネージング・ディレクターを務めている。

 一連のリサーチを通じて、ファースト・ハイヤーズから学べるベストプラクティスをまとめたので、自分の状況に応じて実践するための助言とともに紹介しよう。基本的にスタートアップの従業員の経験にもとづく教訓だが、はるかに大きな組織で成功するために必要なスキルにも直接、応用できる。