韓国政府はこれに加え、兪明希(ユ・ミョンヒ)通商交渉本部長を米国に派遣して、日韓間の問題の仲裁を要請した。兪本部長は米国の主要通商当局者と会い、日本の措置が国際ルールに違反する理由や、アップル、クアルコムなど米国企業に与える被害の可能性などを説明すると見られている。だが、米国が耳を貸すかどうかは分からない。米国は日韓で問題になったレーダー照射事件に介入してこなかったからだ。米国政府にとってみれば、日韓の対立は面倒なので介入したくない、というのが本音であろう。

 韓国の財界はこうした状況に焦りを感じ始めており、独自に半導体素材の調達に乗り出している。サムスンとSKハイニックス、LGは第三国での在庫確保に乗り出しており、台湾や欧州などの第三国で製造している日本企業の製品を調達すべく、文字どおり東奔西走している。特にサムスンの李在鎔(イ・ジェヨン)副会長は10日、文大統領が主宰する財界人との会合を欠席してまで日本出張に乗り出している。もともと財界との重要な意見交換は、各企業個別に行われなければ本音は聞けない。今回のような会合は、文大統領の「自分は努力している」という国民向けのアピールであろう。財界は、もはや文大統領は頼れないということか。

韓国は日本に対して
貿易政策で報復できない

 そもそも日本の輸出管理の措置は、韓国が主張するような「元徴用工」問題への報復として取ったものではない。あくまでも、日本企業が韓国に輸出した上記3品目の取り扱いについて「不適切な事案」があったためで、輸出に当たって個別の審査と許可を経るよう求めることにしただけだ。

 ただ、日本政府は何が「不適切な事案か」は説明していない。西村康稔官房副長官は、韓国とは「輸出管理をめぐり3年以上十分なコミュニケーション、意見交換が行われていないという点も背景にある」と指摘している。

 今年5月に朝鮮日報が報じたところによれば、韓国政府が作成したリストで、2015年から19年にかけ戦略物資が韓国から流出した不正輸出案件は156件に上るといわれる。韓国はこうした不正輸出を摘発しているというかもしれないが、それではなぜこれまでそれを公表しなかったのか、日本との適正な貿易管理のための協議に応じなかったのか。これでは文政権は日本との情報の共有を回避し、不適切事案について隠ぺいしようとしていると受け取られても、やむを得ない状況である。

 文大統領は北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の機嫌を損なわないよう、北朝鮮が嫌がることは極力避けてきた。韓国船が北朝鮮への石油の瀬取りへの関与が疑われても、その調査に及び腰だ。その上、北朝鮮産の石炭をロシア経由で輸入した韓国企業もかばっている。日本が個別許可を求めた3品目は、化学兵器やレーダーなど、軍事転用され得るものであり、それが北朝鮮に流れたとしたら、日本や東アジアの安全保障に甚大な影響を与えかねない。こうした物品の輸出管理を適正に行うことは日本政府の国際的義務であり、WTO違反とは全く関係のないことだ。