「ベルトーネ」とBMWとのコラボレーションの歴史は、ジョルジェット・ジウジアーロ氏がデザインを手がけた1962年のBMW「3200CS」にまで遡ります。

 同社はその後、1969年にガンディーニ氏の手によるBMW「2800 SPICUP」のデザインを発表しますが、これはBMW「507」をベースにしたコンバーチブルで、フロント部分はアルファロメオ「モントリオール」と驚くほど似通ったデザインとなっていました。

「ベルトーネ」が興隆を誇った時代でしたが、BMW「507」は極めて高価な一台となってしまったため、生産は1度で打ち切られることになりました。その次にガンディーニ氏が手掛けたのが、この「ガルミッシュ」です。

 1970年のジュネーブ・モーターショーに登場したこの中型クーペは、世間をアッと驚かせることになりますが、その後、人知れず姿を消してしまったのです…。

「ベルトーネ」のクルマで行方が分からないのは
「ガルミッシュ」だけではありません

 例えば、『1965 フォードマスタング』が挙げられるでしょう…。

 秘蔵のプライベートコレクションに、レンブラントの名画などと一緒に納められてしまったかしれない…。もしくは、壊れたまま人知れずどこかに放置されているか…と、いずれかの可能性がリアルに考えられます。

 そうしてそんな幻の名車が、いま改めて復活を遂げたわけのでした…。マルチェロ・ガンディーニ氏は上機嫌で、当時のエピソードを語っています。

 原案を立てたのは、ヌッチオ・ベルトーネ氏その人でした。ジュネーブ・モーターショーにおけるサプライズ・ショー・カーをデザインし、BMWとの関係をより強固なものにしようと考えたわけです。私たちは、BMWのデザインの伝統を踏襲しつつも、よりダイナミックで驚きに満ちた、現代的な中型クーペをつくろうと計画しました。「ガルミッシュ」という名を選んだのは、そのころイタリアでは、スキーが非常に流行っていたからです。ウィンタースポーツの愉しみと、エレガントな山々とを連想させるデザインに仕上げたのです。今回復元されたこのクルマを目にしましたが、オリジナルと見紛うほどの出来栄えです。

BMW幻の名車、49年の時を経てよみがえる
BMW

 BMWによれば、「ガルミッシュ」に関する資料はほとんど遺されておらず、プロジェクトチームは小さな白黒写真などの限りある資料をもとに細部を再現しなければならなかったとのこと。復元にあたってガンディーニ氏とBMWは、最新の3Dモデリングを駆使し、そしてチュリン(伊ピエモンテ州にある都市)の名工達の手によって、50年前の当時流行していた明るいシャンパン・メタリックに仕上げられたのです。

(Text by Máté Petrány and エスクァイア編集部