東京五輪まであと1年。来週から東京都は「スムーズビズ」なる、鉄道や道路の混雑緩和の予行演習を行う。しかし、驚くほど広報されておらず、知っている人の方が少ないと思われる今回の取り組み。結局、鉄道の混雑緩和のために何をすればいいのか分からぬまま、大会本番まで1年を切ろうとしている。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)

誰も注目していない…
「スムーズビズ」に見る危うさ

東京五輪開催中の混雑対策の具体策が見えない東京五輪まで1年となったが、いまだに鉄道の混雑についての具体策はよくわからないままだ Photo:JIJI

 東京オリンピック開催まであと1年。東京都は7月22日から9月6日までを、交通混雑緩和に向けたさまざまな取り組みを総合的にテストする「スムーズビズ推進期間」に定め、大会本番に向けて混雑回避・混雑緩和の予行演習を実施する。

 東京都職員に加え、アサヒビール、味の素、JR東日本、JTB、全日本空輸、東京ガスなど、オリンピックのスポンサー企業が参加し、テレワークや時差出勤、会議の開催時期変更によって「人の流れ」を変え、さらに、商品の納品時期や配送ルート変更、共同配送によって「モノの流れ」を変えようという試みだ。

 開会式のちょうど1年前となる7月24日を「集中実施日」、24日を含む22~26日の週を「チャレンジウィーク」と位置付け、参加企業の取り組みのピークを合わせるという。

 だが、来週からこのような取り組みが始まることを、どれだけの人が知っているだろうか。大会期間中の通勤・物流への影響が懸念される中、開催前最後の夏に行われる今回のトライアルは広報や課題出しの貴重な機会であったはずだが、そもそも「スムーズビズ」という言葉からして初耳という人が多いのではないか。

 スムーズビズとは、東京オリンピック・パラリンピック大会期間中の交通混雑緩和を目的とした交通需要マネジメント(TDM)や、テレワークの推進、時差通勤を推進する時差Bizなどの取り組みを総称したもので、大会の「レガシー」として新たなワークスタイルを社会に定着させようという意図のもと、東京都が今年度から推進するキャンペーンだ。

 公式サイトには、2019年に交通混雑緩和の取り組みの試行、2020年の大会期間中に取り組み実施、取り組みの定着へという、トライアルから定着への流れが示されている。もしかしたらスムーズビズに参加するオリンピックスポンサー企業では綿密な工程表が組み上がっているのかもしれないが、首都圏全体では来年に向けて準備が進むどころか、課題すら共有されているようには思えない。