もう1つ、ピーチが関空を拠点に選んだのには大きな理由がある。

 居住人口や経済規模の大きい首都圏ではなく、あえて関西を拠点としたのは、「LCCの飛行時間は4時間まで」という制約の中で地理的に有利だったためだ。

 井上社長はANAに在籍していたころからLCCの研究を重ね、世界中のLCCを乗り回った結果、「この狭い座席で我慢できるのは4時間まで」と実感し、ピーチの飛行時間も4時間までと決めた。

 照準を飛行時間4時間に定めれば、おのずと就航地点が限られてくる。日本国内を飛んでいるぶんには、ほぼ2時間に収まるため問題ないが、国際線を展開するようになると、それは重要な意味を持つのだ。

 成田を拠点にすると飛行4時間の地点は、北京や台湾までとなる。これが関空であれば、飛行時間にして1時間ぶん西に位置する香港や広州、マニラにまで就航地点を広げられる。

 国内市場は、少子高齢化による人口減で縮小していくことが見込まれる。会社が継続して成長していくには、経済成長著しいアジア地域からのインバウンド(訪日外国人客)を取り込みたいと考えたのだ。

 ピーチは早くも5月には韓国線、さらに7月からは香港線を開設する。ソウル市内で記者会見したり、会社の中国名称を付けるなど、現地での知名度向上に余念がない。すでに韓国線の4割は韓国での予約客と、もくろみ通りインバウンドの取り込みに成功している。

 同じように今夏から成田に就航するジェットスター・ジャパンとエアアジア・ジャパンも、就航後まもなくして国際線の開設を計画している。早くもLCC3社の競合が見込まれるが、井上社長は「他2社の参入は、市場を食い合う競合以上に、LCCという新ジャンルが生まれてわれわれの知名度が向上する効果のほうが大きい」と余裕を見せる。

 2012年、日本の空のビッグバンが始まった。