ダイバーシティやインクルージョンの重要性を頭では理解できていても、それを実践するのは容易ではない。人はそもそも、自分と似通ったバックグラウンドを持つ相手を高く評価しがちである。みずからのバイアスを認め、それを意識的に回避しなければならない。筆者は、採用時に有効な6つの戦略を示す。


 多様な人材を採用しようとするとき、よかれと思ってやったことが、よい結果をもたらすとは限らない。

 ある大手グローバルテクノロジー企業の採用担当者は、採用プロセスをあれこれ見直したのに、多様な人材の登用につながらないとこぼしていた。初期の面接段階では非白人候補が増えたのに、最終的な採用者は圧倒的に白人に偏っているというのだ。

 同じような状況は、複数の組織や業界で見られる。これは、たとえ十分な資格がある候補者でも、そのバックグラウンドが過小評価されていると、採用担当者の無意識のバイアスによって、自動的に切られてしまうためだ。

 企業における平等な人材登用は、採用プロセスと多様性イニシアチブを改革するだけでは実現できない。採用に関して最終的な決定権を持つことが多い各部門のマネジャーが、みずからのバイアスに対処する必要があるのだ。

 でも、どうやって?筆者の経験では、各部門のマネジャーができることはいくつかある。

 ただし、どんな対策を講じるにせよ、人間はもともとインクルーシブ(包摂的)な行動を取るようにはできていないことを理解しておく必要がある。私たちは生物学的に、自分と似ている人と手を組み、自分とは違うと感じる人は拒絶するようにできている。

 それを変えるためには、凝り固まった考え方(多様なチームをつくるためにすでに最善を尽くしているという考え)を、オープンで成長志向の考え方(自分のバイアスを深く理解し、それを疑い、立ち向かう姿勢)に変える必要がある。

 そこで、筆者が推奨する具体的な戦略を紹介しよう。