同社は今年3月、米ベンチャー企業が開発したスマートフォン用のアプリに関し、日本と台湾で販売する権利を取得。このアプリは発達障害の一種である注意欠陥多動性障害(ADHD)などの治療用で、医療機器としての承認を目指している。

「技術進歩が速いため、今見えていないものが大当たりする可能性もある」と手代木氏。デジタル事業に加え、核酸やペプチドといった中分子医薬と呼ばれる分野にも経営資源を割き、「特許の崖」の到来に備える。

脱・依存体質

 塩野義は売上高こそ国内9位の規模だが、売上高に占める営業利益の比率は業界トップを誇る。

 同社はこれまで、自社開発品を海外で販売する際、権利を他社に譲り、売り上げに応じて対価(ロイヤルティー)を受け取る契約を結ぶことが多かった。

 前述の抗HIV薬に加え、高脂血症薬「クレストール」やインフルエンザ治療用の「ゾフルーザ」はその代表例で、昨年度はロイヤルティー収入が売上高の約5割に上った。

 海外での販売を他社に任せることでコストを抑制し、営業利益率を押し上げてきた側面がある。

 だが、抗HIV薬の特許切れはロイヤルティーの減少を招く。同社は、今年度に米国で承認が見込まれる抗生物質「セフィデロコル」を自社販売し、他社に依存しない体制作りを急ぐ。

 この薬は専門性が高く、販売先は大規模な病院などに限られるため、多くの営業部隊が必要とされるわけではない。身の丈にあった戦略だが、塩野義が米国で自社販売するのは極めて珍しく、収益構造の変化を見据えた象徴的な取り組みといえる。