橘玲の日々刻々 2019年7月18日

いじめの解決には、教育に「科学」を導入し、いじめの温床に
なっている「学校風土」を実践的に変えていく方途を探ることが必要
【橘玲の日々刻々】

教師が教師をいじめ、教師が子どもをいじめる「学校風土」が、子ども同士のいじめの背景にあるのでは

 会社の部門(部署)ごとに雰囲気が異なることは誰でも知っている。会社ごとのちがいはさらに大きく、これは「企業風土」と呼ばれる。

 「いじめが起こりにくい教室の雰囲気をつくる」というのは、「学校風土」を改善することでもある。よい雰囲気のクラス(学校)では一般生徒(観衆)はいじめを不快なものと嫌い、加害を抑止するのだ。

 だがこれは、じつはそうかんたんなことではない。

 教育学者・秦政春氏が1999年に福岡の小・中学校の教師と小・中・高校生を対象にした調査では、教師が子どもに対して八つ当たりをすることが「よくある」「ときどきある」と回答した小学生が合わせて23.6%、中学生が23.3%いた。えこひいきをすることが「よくある」「ときどきある」と回答した小学生は合わせて25.6%、中学生が27.9%、先生に「いじめられた」と感じることが「よくある」「ときどきある」と答えた小学生は12.2%、中学生は12.7%であった。

 子どもたちの4人に1人は教師から八つ当たりされたり、えこひいきされたりしたことがあると感じており、8人に1人は教師から「いじめられた」と感じていた。

 教師同士の人間関係についてはどうだろう。同じ調査で、今の学校での教師間のいじめについて「よくある」「ときどきある」とした小学校教師は合わせて15.1%、中学校教師は20.6%で、自分が他の教師からいじめられることが「よくある」「ときどきある」とした小学校教師は合わせて13.0%、中学校教師は14.8%だった。他の教師から陰口を言われたという小学校教師は46.1%、中学校教師は48.5%、嫌味を言われた小学校教師は58.6%、中学校教師は60.5%だという。

 日本の学校では、教師の5~6人に1人が「教師同士のいじめがある」と報告しており、自分が「いじめられたことがある」とする教師も6人に1人程度いる。

 ここから想像できるのは、教師が教師をいじめ(あるいは足を引っ張り)、教師が子どもをいじめる(あるいは八つ当たりする)「学校風土」が、子ども同士のいじめの背景にあるのではないかということだ。日本の社会がいじめの起きやすい「学校風土」をつくってきたことが、子どもたちのいじめが深刻化する理由なのかもしれない。

 もちろん、これはたんなる仮説にすぎない。和久田氏が指摘するように、「日本には学校風土を科学的に正確に測定できる尺度がない」のだ。

 だとすれば急務なのは、いじめによる悲惨な事件が起きるたびに血眼になって「犯人さがし」をすることではなく、教育に「科学」を導入し、いじめの温床になっている「学校風土」を実践的に変えていく方途を探ることではないだろうか。

 

橘 玲(たちばな あきら)

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 作家。2002年、金融小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)が30万部の大ヒット。著書に『「言ってはいけない 残酷すぎる真実』(新潮新書)、『国家破産はこわくない』(講談社+α文庫)、『幸福の「資本」論 -あなたの未来を決める「3つの資本」と「8つの人生パターン」』(ダイヤモンド社刊)『橘玲の中国私論』の改訂文庫本『言ってはいけない中国の真実』(新潮文庫)、『もっと言ってはいけない』(新潮新書) など。最新刊は『働き方2.0vs4.0』(PHP研究所)。

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橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
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