会社設立を「助業」で支えるPhoto by Masaki Kato

みずほフィナンシャルグループにおいて、メガバンク初の「副業解禁」が打ち出されて話題を呼んだ。銀行界で副業というテーマが注目を集める最中、三菱UFJフィナンシャル・グループの三毛兼承社長は、週に複数日、職員をスタートアップ企業に出向させる「助業」という制度をまもなく導入すると語った。(聞き手/ダイヤモンド編集部 田上貴大)

――新興のスタートアップ企業や巨大プラットフォーム企業といった外部企業が金融業に対し、領域侵犯しています。どう立ち向かいますか。

 他業種の企業や、新しい(金融とテクノロジーの融合分野である)フィンテックのスタートアップ企業が参入するなどのケースがたくさんあるわけですが、彼らのビジネスモデルはディスラプティブ(破壊的)ですので、既存の金融機関としては脅威になる場合があります。

 ただ、私たちも第3回アクセラレータプログラムでグランプリを取ったクレジットエンジンという会社と協業して、新しい「Biz LENDING」というオンラインレンディングサービスをつくることができました。こうしたフィンテックの企業は、むしろ私たちに新しい取り組みをさせてくれる「イネイブラー」という存在であることが多いと私は思います。

 フィンテックの企業は、総合的な金融サービスの一部をアンバンドル(分解)し、その一部に特化しているケースが多いです。私たちは、このアンバンドルされた企業が持っている、特化された新しいコンセプトや顧客体験をリバンドル(再構成)して、私たち自身の金融プラットフォームの中で生かすことを考えています。

 彼らからすると顧客基盤はゼロからのスタートになりますから、彼らが考えたものをグループの顧客基盤を使って実現できることに、それなりに大きな意味があります。そうしたかたちで一緒にできる企業はいっぱいあります。

 私たちとしては、そうした企業が生まれて、育っていくことをサポートしたいという思いで、アクセラレータプログラムやハッカソンのホストに取り組んでいます。それに、三菱UFJイノベーション・パートナーズというコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)を担う子会社をつくり、そういう企業に出資して育成することもやっています。

 一方で、協業できる可能性が大きい異業種というよりも、むしろプラットフォーマーと呼ばれる企業たちが金融業に参入してくることが、私たちにとってのチャレンジになる可能性はあります。

 こういう企業について話すと、Facebookであれば、独自の仮想通貨である「リブラ」を発行することで、27億人いるとされるFacebookユーザーに対して2020年には金融を取り込んでいこうとしています。詳細がつまびらかになっていない分、具体的なことは分かりませんが、各国当局はKYC(Know Your Customer、顧客の本人確認)がどうなるか、アンチマネーロンダリング(資金洗浄対策)で問題はないか、消費者保護やプライバシー保護に問題はないか、さまざまな観点で議論を進めていくことになると思います。

 こういうサービスが金融システム全体に影響を与えるような存在になっていくとすれば、既存の金融機関と同様に、どういうかたちならば社会に対して問題を起こしたときの影響をコントロールできるかがテーマになるでしょう。

 ただ、彼らが提案している顧客に対する新しい利便性や顧客体験は、私たちも大いに学ぶべきところがあります。私たち自身の中で新しいサービスをつくる上で、活用していくという考えが必要です。