アパホテルの元谷芙美子社長Photo by Kazutoshi Sumitomo

非上場企業であるアパは、元谷外志雄代表と芙美子社長、そして2人の子息の4人で株式の100%を保有している、典型的なファミリービジネスである。「子どもの代よりも孫の代への教育に力を入れている」と話す元谷社長の事業承継への考え方とは?(聞き手/ダイヤモンド社論説委員 鎌塚正良)

子どもの頃から
事業について教え込んだ

──2人のご子息はいつから経営に参画しているのですか?

元谷 長男は20年前、次男は18年前から入社しています。長男は現在、グループの本部機能を担うアパグループ株式会社の社長、次男は中核会社であるアパホテル株式会社の代表取締役専務として、第一線で活躍してくれています。長男はそれ以前に三井住友銀行、次男は北陸銀行にそれぞれ勤めていました。当時の住友銀行はメインバンクで、北陸銀行は地元の創業時からのメインバンクでした。この2つのメインバンクに入社しましたが、その後「アパに入社しろ」とは言っていません。2人とも自分の意思で入ってきました。

 代替わりの前に、一緒に仕事をする助走期間を長く持てるのは、幸せなことだなと思っています。突然次の世代ということになると、混乱が起きたりしますからね。

 うちは典型的な家父長制の家。子どもの頃から、それに基づく教育をしてきました。家督を継ぐのは長男。次男は一歩下がって長男を支えるのが当たり前。それこそが次男の役割だと教えてきました。

──次男は長男に勝ってはいけないということですか?

元谷 いいえ、実力では勝ってもいいんですよ。その上で、長男を立てなくてはいけない。例えば、弟がたとえ優秀であっても、お兄ちゃんよりも良いと思われる高校や大学は選ばない、とかね。能力のない弟は良くないですから。弟にこそ、しっかりしてもらわないと。

 息子たちに対しては、小学生の頃からそれこそ、「勉強よりも事業のことを知りなさい」と育てたんです。2人とも隠れて宿題をしていました。父親である代表が午後11時ごろに帰ってきたとします。すると、息子たちが寝ていても起こして、今日あった仕事の話などを聞かせるんです。