失敗や不正を犯したときには何らかのペナルティが課されるが、まったく同じような状況で、同じような間違いを犯したとしても、問われる責任の重さは人によって異なる。なぜだろうか。筆者らが実施した調査により、リーダーが「支配型」か「信望型」かの違いのよって、ペナルティの差が生まれることが判明した。


 2009年、バラク・オバマ米大統領(当時)は、ティモシー・ガイトナーを財務長官に、トム・ダシュルを保健福祉長官に指名した。

 ガイトナーは金融業界では有名な存在で、ニューヨーク連銀総裁として2007~08年の金融危機のときに優れたリーダーシップを発揮した。ダシュルも政界ではよく知られた存在であり、長年サウスダコタ州選出の上院議員を務め、民主党が多数派のときも少数派のときも院内総務を務めた。そして2人は、同じ時期に税金の申告漏れを指摘された

 ガイトナーダシュルも、申告漏れはうっかりミスだったと主張したが、結果は対照的なものになった。ガイトナーは無事、上院での指名承認を経て第75代財務長官に就任したが、ダシュルは指名辞退に追い込まれたのだ。

 2人とも、それぞれの領域の有力者で、同じような不正行為が問題となり、同じような釈明をしたのに、その報いを受けたのは1人だけだった。なぜか。

 もちろん理想は、同じような不法行為には、同じ処罰が下されることだ。しかし現実には、必ずしもそうなるとわけではない。

 これは、ビジネスリーダーでも同じだ。たとえば、バイユー・ヘッジファンド・グループのファンドマネジャーは、4億ドル以上を顧客からだまし取ったとして、20年の禁固刑を言い渡されたが、会社ぐるみで17億ドル相当の不正行為を働いたとされるオリンパスの経営幹部は、実刑判決を受けずに済んだ

 なぜ、同じような不正行為を働いても、厳しく批判され、重い結果を突きつけられるリーダーと、「疑わしきは罰せず」の恩恵を受けるリーダーがいるのか。最近『アカデミー・オブ・マネジメント・ジャーナル』に掲載された、筆者のグループの研究は、その人物がリーダーになるまでの経緯と関係があることを発見した。