Sansan経済圏確立に向け、M&Aも視野に

――Sansan、Eightに続く新たな事業の柱の予定は。

 当面はSansanとEightの2本柱になるはずです。新規事業の開発はデータサイエンティストチーム「DSOC(Data Strategy & Operation Center)」で進めていますが、それらは結果的にSansanやEightの新機能になっています。

 例えば、名刺の認識精度向上。Sansanのサービスを始めた頃は顧客から預かった名刺をスキャンしても正しく読み取れず、ほぼ全ての情報をスタッフが手打ちで入力していました。現在は独自の画像認識技術によって、かなりの作業を自動化しています。

 すでに(他社のMAツールなどと)データを統合・リッチ化する「顧客データHub」を追加価格で提供していますが、このような形で今後もニーズに沿った機能を追加するつもりです。Sansanをプラットフォームのハブにしつつ、蓄積したデータをよりさまざまな形で利用できるようにしたい。

――Sansanを中心とした経済圏を作る際には、他社のM&Aも視野に入れているのでしょうか。

 Sansanとの親和性が高いサービスを手掛ける企業のパートナー化、あるいはその延長線上としてのM&Aは常に選択肢として検討しています。

 4月には法人向けアンケートツールを開発するクリエイティブサーベイに2億円の出資をしました。名刺のデータベースを活用してアンケートを取るなど、Sansanの派生サービスになる可能性も十分あります。これからも顧客のビジネスをより豊かにできるサービスを支援していきます。

――地方拠点も複数立ち上げています。特に徳島県神山町では、オフィスを立ち上げただけでなく、個人でも高専を設立する「神山まるごと高専」プロジェクトの発起人になるなど、活動が盛んです。

 支店(東京のほかに大阪、名古屋、福岡)は営業拠点。神山ラボ(徳島)、イノベーションラボ(京都)、長岡ラボ(新潟)、札幌ラボ(北海道)は、どうしても採用したいエンジニアがその地域を離れたくないというところから立ち上げるなどしました。

 神山町にはいろいろな縁があり、単なる支援よりも積極的な形でプロジェクトに参加しています。高専では単なる起業家育成にとどまらず、自分でアジェンダを設定して道を切り開く人間――私は「野武士型パイオニア」と呼んでいるのですが――そんな人材の育成を目指します。

 今の日本では、新たな道の開拓は行動力をもった人が勝手に取り組むものだと考えられています。ですが、こうしたマインドセットやそのための技術、デザインシンキングを身につける場所があれば、再現性は増すでしょう。そうなればスタートアップ業界だけでなく、日本全体にとってプラスになるはず。あくまで本業優先ですが、Sansanで培った経験をもとに可能な範囲で積極的に関わりたいです。

寺田親弘 Sansan代表取締役社長。三井物産株式会社に入社。情報産業部門に配属された後、米国・シリコンバレーでベンチャー企業の日本向けビジネス展開支援に従事する。帰国後、社内ベンチャーの立ち上げや関連会社への出向を経て、2007年にSansan株式会社を創業。 Photo by Y.I寺田親弘 Sansan代表取締役社長。三井物産株式会社に入社。情報産業部門に配属された後、米国・シリコンバレーでベンチャー企業の日本向けビジネス展開支援に従事する。帰国後、社内ベンチャーの立ち上げや関連会社への出向を経て、2007年にSansan株式会社を創業。 Photo by Y.I