橘玲の世界投資見聞録 2019年7月26日

カリブ海に生まれた「ラスタファリズム」という黒人宗教と
ボブ・マーリー、レゲエミュージックの数奇な歴史
【橘玲の世界投資見聞録】

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 古代地中海世界の周縁に位置したエチオピアには古いユダヤ教やキリスト教が残っており、モーゼが神から受け取った十戒の石版を納めたアークがエチオピアの教会に保存されているとの伝説がある。しかし、エチオピアと宗教の関係はこれだけでなない。

[参考記事]
●世界的ベストセラー『神の刻印』に書かれたアークの行方はどこまで正しいのか?

 アディスアベバなどエチオピアの都市では、タクシーやトゥクトゥク(オート三輪タクシー)の車体や窓にボブ・マーリーのステッカーが貼ってあるのをよく見かける。

 ボブ・マーリーはジャマイカが生んだミュージシャンで、1970年代のレゲエブームを牽引し、脳腫瘍のため1981年に若干36歳で世を去った。しかし、この不世出の大スターとエチオピアにどんな関係があるのだろうか。

 今回はアメリカの音楽ジャーナリストで、ボブ・マーリーとも親交の厚かったスティーブ・デイヴィスの『レゲエ・ブラッドライン』(クイックフォックス)にもとづいて、カリブ海に生まれた「ラスタファリズム」という宗教とレゲエミュージックの数奇な歴史について紹介したい。

ジャマイカ、キングストンにある自宅を改装したボブ・マーリー博物館 (Photo:@Alt Invest Com)

 

ジャマイカ生まれの無名の黒人の若者がわずか数年でアメリカの黒人運動の立役者に

 マーカス・ガーヴェイは1887年、ジャマイカ北部の都市セント・アンに生まれた。ラスタファリズムの歴史は、この黒人運動家から語りはじめなくてならない。ちなみにそれから57年後の1945年、同じセント・アンでボブ・マーリーが生まれている。

 15歳でジャマイカの首都キングストンに出たガーヴェイは、アフリカ帰還運動に大きな影響を受ける。

 19世紀初頭からアメリカの黒人のあいだに、たとえ奴隷制が廃止されても人種差別が激しいアメリカでは自由で幸福な人生は手に入らないとして、「故郷」であるアフリカに帰還すべきだという主張が唱えられるようになった。これがアフリカ帰還運動で、1816年に結成されたアメリカ植民協会(American Colonization Society)が西アフリカに「リベリア(Liberia/自由)」という植民地をつくって自由黒人を移住させる試みが行なわれた。

 20世紀を迎える頃になると、アフリカやアジアで反植民地主義の独立運動が勃興するようになる。ガーヴェイが体験した「アフリカ帰還運動」はこの第二波で、アフリカをアフリカ人の手に取り戻して「黒人国家」を独立させ、そこに奴隷として全世界に散らばった黒人のディアスポラ(追放者)が帰還する夢が語られた。

 ガーヴェイは20歳のときに印刷所の工員のストライキを指導したのち、説教師、事業家としてキングストンの名士になっていく。その後、29歳でアメリカに渡ったガーヴェイは、翌1917年に全黒人地位協会(UNIA)を創立。当初は会員の相互扶助を目的としていたが、第一次世界大戦後の民族自決の熱気のなかで、アフリカ帰還を通して黒人救済を目指すようになった。

 ガーヴェイはニューヨークで『ニグロ・ワールド』という新聞を発行し、「ひとつの目的、ひとつの国家、ひとつの運命」を掲げた。「目的」とはアフリカに黒人の国家をつくることであり、「運命」とはすべての「奴隷の子孫」たちが故郷に帰還することだった。UNIAは本部をニューヨークのハーレムに構え、アメリカ、カリブのみならずアフリカにまで支部を置くようになり、一説によると600万人もの会員が集まった。ジャマイカ生まれの無名の黒人の若者は、わずか数年でアメリカの黒人運動の立役者にまで成り上がったのだ。

 アメリカじゅうでアフリカへの帰還を布教したガーヴェイは、訪れる町の黒人コミュニティから救世主のごとく歓迎された。それはまさに、「ガーヴェイ教」という新たな黒人宗教の誕生だった。

ジャマイカの首都、キングストン (Photo:@Alt Invest Com)

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橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
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