目下のところ、日韓関係は最悪の状況に陥っている。そして、それを上回るかのようなレベルで、韓国内では文在寅(ムン・ジェイン)政権と経済界との対立が深まっている。

 韓国経済界の中でも、文政権批判の急先鋒の立場にあるのが、サムスンに代表される財閥グループであろう。

 市民活動家出身の文大統領は、その支持基盤に響くようにと、法人税率の引き上げ、賃金の上昇など大企業を冷遇する施策を打ってきた。

 もっとも、文政権が目玉政策として掲げてきた「財閥改革」を強硬に進めることは、文政権にとって諸刃の剣だ。財閥のパワーを弱めることで政権の支持率を上げられるかもしれない。だがその一方で、韓国経済は財閥グループに過度に依存しているため、財閥グループの弱体化が韓国経済の弱体化へと直結してしまうからだ。

「最強のカード」を切った日本政府

 ここにきて、それが現実のものとなりつつある。

 中国経済の失速や米中貿易摩擦の影響を受けて、サムスン電子の2019年4~6月期営業利益は前年同期比56%減となった。大手企業の経済活動の足を引っ張る文政権に対する、韓国経済界の不信感は最高潮に達している。

 7月7日、サムスン電子のイ・ジェヨン副会長が緊急来日し、取引先や金融機関などを訪問した。10日に文大統領主催の財閥トップ懇談会を欠席してまでの弾丸出張に、「文政権よりも日本のサプライヤーを重視した証左だ」「サムスンの本音は、日本政府以上に韓国政府に対して、ふざけるなという気持ちだろう。よほど文大統領に会いたくなかったのではないか」との声が日系メーカー幹部からはあがっている。

 業績悪化に続く日本による輸出規制ショックは、サムスンにとってダブルパンチ以外の何物でもない。

 日本政府も(輸出規制を管掌している)経済産業省も、今回の規制強化は、あくまでも安全保障を担保するための協力・制度の見直しであり、元徴用工問題への制裁措置であるとは認めていない。