英国は「ブレグジット総選挙」が濃厚、労働党党首に好機到来か英労働党党首のジェレミー・コービン氏(写真右)と著者。Photo: Shutterstock/AFLO

 ボリス・ジョンソン氏は、欧州連合(EU)に対するアプローチについてジレンマに悩まされることのない、久しぶりの英国首相である。良かれ悪しかれ、自身が権力を握るために使った戦略ゆえに、ジョンソン氏には有効なオプションが1つしか残されていない。

 つまり、ブレグジット(英国のEU離脱)期限である10月31日以前にEUと交渉することは考えない、この日に総選挙を行い、仮定・条件・合意なしの欧州との「離婚」に対する国民の支持を求める、そして内外の敵対勢力がやきもきするのをのんびりと眺めるのだ。

 合意なきブレグジットに伴う明白な不利益はともかくとして、ジョンソン氏には他に有効な次善の策が存在しない。(EU本部のある)ブリュッセルを訪れ、前任者によるブレグジット合意について再交渉するのは、まずい戦術だろう。テリーザ・メイ前英首相の失敗から分かるのは、EU全体の利害と、そのエスタブリッシュメント(主流派)に固有のモチベーションを区別できなかったことだ。

 欧州大陸の輸出企業の利益を確保するか、EU官僚機構のこれまで通りの流儀を維持するか、という選択を迫られれば、ミシェル・バルニエEU首席交渉官や、彼を支える政治指導者らは、間違いなく後者を選ぶだろう。したがって、メイ前政権が交渉した離脱合意に重要な修正を加える提案は、仮にEUの長期的な利益に資するものであるとしても、拒否されてしまうだろう。