リーダーは日々、さまざまな決断を下している。その程度に差はあるものの、彼らによる決断のすべてがステイクホルダーに影響を与えるものだ。リーダーに必要な資質は従来、IQ(知能指数)とEQ(心の知能指数)だとされていたが、筆者はさらにDQ(良識指数)も必要であると説く。イノベーションによって創造されるものを讃えるだけでなく、それによって破壊されるものにも意識を向けなければならない。


 ビジネスリーダーは、日々決断を下している。大きな決断もあれば、小さな決断もある。ポジティブな決断もあれば、ネガティブな決断もあるだろう。そのすべてが、社員、顧客、株主、コミュニティ、さらには社会全体に影響を与える。

 こうした決断を道徳的かつ倫理的に下すためには、リーダーに必要とされる資質をアップデートする必要がある。現代、そして今後数十年にわたり成功するリーダーは、IQとEQとDQの3拍子が揃っていなければならない。このうちIQ(intellect intelligence:知能指数)とEQ(emotional intelligence:心の知能指数)は、よく知られている。そこにDQ(decency intelligence:良識指数)を加える必要があると、筆者は考えているのだ。

 ビジネスでは適格性が不可欠だ。知力(IQ)はおそらく、成功したビジネスリーダーシップと最もよく関連づけられる特質だろう。ここで言っているのは、知能テストの点数だけではない。ビジネスをやるうえでの適格性と、現代において成功するためには何が必要かへの理解が含まれる。

 ほとんどのリーダーは、EQの概念もよく知っている。EQとは、他人と自分の感情を理解していることである。EQの高いマネジャーは、人の気持ちを理解し、その場の空気を読み、その情報に基づいた行動を取れる。しかしその行動は、他人にとって最善なことを踏まえたものになるとは限らない。

 他人の感情に気づいたり、共感を抱いたりすることは、思いやりや品性があることとは違う。EQを利用して、人を都合よく操ることもありうる。EQの高い人が、正しいことをするとは限らないのだ。

 良識指数(DQ)は、EQを一歩進めたものだ。DQが高いということは、社員や同僚に共感するだけでなく、彼らの力になりたいと純粋に願っていることを意味する。職場の全員にとってポジティブなことをやろうとし、全員がリスペクトされ、大切にされていると感じられるようにする。DQは、人を正当に扱うことを重視するのだ。

 筆者が初めてDQについて聞いたのは、マスターカードのアジェイ・バンガCEOからである。デューク大学フュークア・スクール・オブ・ビジネスの講演会でのことだ。「IQは本当に重要だ。EQも本当に重要である。(でも)私にとって本当に大切なのはDQである」と、バンガは言った。「毎日、良識を持って仕事に臨めば、多くの人にとって会社を楽しい場所にできる。そうすれば、彼らは会社にいることを、正しいことをするのを楽しむだろう」