マッキンゼー時代、僕はハードスケジュールの合間を縫って、クライアントではない人ともよく会いました。

 たとえば、欧州のジャーナリストがコメントを求めてくれば、たった3行しか引用されないとわかっていても、1時間は面会時間を取った。

 顧客でもない人にそこまでするのは骨折り損かというと、決してそうではない。今では僕の本が欧州で出版されるたびに、同じジャーナリストが宣伝などで協力してくれます。人脈は、こうしたギブ・アンド・テーク抜きでは広がりません。

 先日、ウェルチに時間をもらって、僕が教えている優秀な学生4人を交えてメシを食ったんですよ。

 その席でウェルチから「MIT(マサチューセッツ工科大学)で教えているんだけれど、講義をやってくれないかな」と頼まれた。今度、僕がMITのあるボストンに行くときには、どんなに忙しくともウェルチに借りを返さなければならないわけです。

 こうした信頼関係が前提にあればこそ、僕もウェルチも互いに頼みごとができるし、それを通じて人脈も仕事も広がっていく。豊かな人脈は、つまるところ「頼むより頼まれる人物」について回るのではないでしょうか。これはまねできないかもしれないけれど、だから僕は本を書こうと思い立ったんです(笑)。

人脈構築は「貸し借り」の連続である。頼みごとをしたら、頼まれたことは必ず引き受ける。「いかにして相手の役に立つか」に思いを致さなければ、豊穣な人脈は築けない。「頼むより頼まれる人物になる」。人脈づくりは、ここから始めよう。(敬称略)

大前研一の「原則」

※本コンテンツは週刊ダイヤモンド2007年2月10日号掲載「仕事力 デキるトップの極意」を再構成したものです。