大阪特捜は組織の論理を優先し、国民の負託に応えることなく捜査を終結した。Photo:PIXTA

学校法人「森友学園」を巡る財務省の決裁文書改ざん問題で、有印公文書変造・同行使などの疑いで大阪第1検察審査会が「不起訴不当」と議決した佐川宣寿元理財局長(61)ら10人を再捜査していた大阪地検特捜部は結局、再び不起訴処分とした。3月の議決は文書改ざんを「言語道断」と指弾し、背任容疑についても法廷で事実関係を解明するよう求めていた。問題の発覚から約2年半。大阪特捜は不起訴の理由を「立証・立件は困難」と説明するが、今回、国民が求めていたのは「有罪・無罪」という判決の結果ではなく、何があったのか「真実」を知りたいということだった。しかし、大阪特捜は組織の論理を優先し、国民の負託に応えることなく捜査を終結した。(事件ジャーナリスト 戸田一法)

国民をけむに巻く大阪特捜

 本稿では政局についての背景は一切排除し、あくまで大阪特捜と今回の問題(事件にならなかったので「問題」と表記)について絞って考察していきたい。

 一般的に刑事裁判(公判)での有罪率が99.9%といわれるのは、検察が確実に有罪にできると判断した事件でなければ起訴しない(不起訴、もしくは起訴猶予)という背景があるのは周知の事実だ。

 背任罪は「他人のために事務を処理する者が自己もしくは第三者の利益をはかり、または本人に損害を加える目的で任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を与える」行為を指すが、背任容疑の対象となった近畿財務局の元統括国有財産管理官ら4人に「国に損害を与える」目的を持っていたかの立証が極めて困難だったことは理解できる。

 一方、文書改ざんは既成事実化しているにもかかわらず、佐川氏ら理財局幹部6人についても有印公文書変造・同行使の罪だけで起訴することをためらったのは、一般的に形式犯であり、公判請求(起訴)するような事件でないという理由が考えられる。