引きこもり支援が辿り着いた「恥を感じさせない社会」という当然の指針恥ずかしさを感じて地域と繋がれない当事者の意識を、支援者たちは変えていくことができるのか(写真はイメージです) Photo:PIXTA

京都の実践者研究会が出した
「8050時代」の新たな指針

「助けを求めることが当たり前の社会を」という(引きこもる)当事者の視点から、「自らの生き方を追求し、支援を求めるのは権利」であり、「当事者を真ん中に置いた地域の仕組みづくりが基本」だとする提言が、京都府の生活困窮の実践者の研究会で取りまとめられた。

 提言は、8月に開かれた公開セミナーでも紹介されるなど、地域が直面している「8050時代」の新たな指針になるものとして注目されている。

 この提言をまとめたのは、京都府社会福祉協議会を事務局に、府内の専門家や現場の福祉担当者らでつくる「生活困窮社会における地域づくり研究会」(座長・吉永純・花園大学社会福祉学部教授)。2015年の生活困窮者自立支援法の施行による支援の見直しも見据え、法の趣旨を活かした地域づくりを進めるため、研究会はオープンで開催し、当事者の発言や地域の実践報告も交えながら、参加者と一緒に2年にわたり議論してきた。

 困りごとを抱えている人が自ら支援を求めるには、勇気が必要だ。「どこに相談すればいいのかわからない」という声は、本人や家族の間でも多く、「支援制度やサービスの利用の仕方を見えるようにする」ことが大切になる。

 同研究会では、生活困窮者が長期の失業、いじめ、DV、一見してわかりにくい障害や病気など、複合的な課題を抱え、「生活の不安にさらされていることが多い」と指摘。それでいて、困窮の原因が「自己責任」と考えさせられがちなため、支援を求めることを「恥」や「お世話になる」といった意識になり、「知られたくない」という思いから交流が希薄になり、「支援制度や施策の情報から疎外されている」としている。

 また生活困窮者は、誰かに相談したことがあっても、そのときに問題が解決しなかったことから、相談支援に不信感を持っている場合もある。この結果、「自分の人生をあきらめる」ことにつながっていく。このような生活困窮者は、「相談相手が身近にいない」「支える人とつながらない」場合、孤立した状況に置かれているのが実情だという。