ネットクレーマーを黙らせた
ある大企業の「奇策」

 だったら、どうするのか。実はこのようなケースで、ある大企業はこんな型破りな回答をして、クレームを入れてきた愛国者の溜飲を下げ、逆に称賛されるというウルトラCをやってのけた。

「ご指摘を真摯に受け止め、番組制作サイドに、このような意見がきたということを強く申し入れたいと思います」

 実はこれ、従来の企業危機管理的にはアウトだ。クレーマーの要求を受け入れたということで、相手がどんどん要求をエスカレートさせてしまう恐れがあるからだ。また、受け取りようによっては、企業がスポンサーとして番組の内容にああだこうだと注文ができる、ようにも聞こえるので、別のリスクを生むかもしれない。

 ただ、筆者は時と場合によってはこのような回答も「アリ」だと思っている。

 先ほども申し上げたように、「正義の人」は、自分の頭の中でつくったロジックから逸脱をした話はすべて、「言い訳」「嘘」として耳を塞いでしまう。ならば、この大企業のように、多少のリスクをとってでも、相手を納得させて「デマ」の拡散を抑えてもいいのではないか。

 もちろん、このあたりは賛否両論だ。というより、まともな危機管理の専門家ならば、こんな危ない対応は、まず勧めないだろう。ただ、歴史に学べば、「自警団」が「正義」の名のもとで、なんの罪もない人をよってたかってリンチをしてきた、という動かしがたい事実がある。

 この本質は「ネット自警団」も変わらない。

 ということは、理の通じぬ相手に、一方的にこちらの理を説いてもこれまでの犠牲者同様にリンチの犠牲になるだけということでもある。だったら、「正義の人」と同じ視点で考え、どうにか「有罪判定」を回避すべきでは、と個人的には思うのである。

 恐ろしいネットリンチの餌食にならないためには、マニュアルから逸脱した、柔軟な対応が求められるのではないだろうか。