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マーケット・アップデイト(2012年7月6日)所詮、「買戻しの範囲内」って、買戻しのどこが悪い? - 広木隆「ストラテジーレポート」

前回のレポート「日本株式市場展望」に対してこういうフィードバックをいただいた。

「株というのは所詮、安く買って、誰かに買値より高く買いたい人に売却して利益を得るゲームと考えています。売却が最も難しい。もう売却してしまった状態であれば、更なるリスクはとり取りたくは無い。もう9,000円を超えている。売却後上がろうが下がろうがどうでも良い。皆が総悲観のときに買うものだと思う。」

まったくその通り!と膝を打った。まさに達観です。ところが、こっちは商売でやっているもんだから、みんながみんな、この投稿のお客様のような方ばかりだと、飯の食い上げになってしまう。しかし、そんなことは心配無用だとすぐに思い直した。なぜなら「達観」というのは「目先のことや細かなことに迷わされず、真理・道理を悟ること。俗事を超越し、さとりの境地で物事にのぞむこと」と辞書にある。みんながみんな、そんな境地に達することができないからこそ、その境地に達した考えは「達観」なのである。筆者が余計な心配をせずとも、人は売った後で株が上がれば悔しいし、じりじり株が上がってくれば買いたい気持ちがくすぐられる。みんなが総悲観になるまで待っていられない(皮肉なもので実際に総悲観のときは手が出せない)。それに、「みんな」が総悲観になるまで「みんな」が待っていたら市場で商いが成立しない。この投稿のお客様もご自身でおっしゃっているように、自分の買値より高く買いたい人に売却して利益を得ればよいのだ。底値を待つ必要はない。

要は、ここから買って上値があるか?というシンプルな議論。筆者はまだまだ上値余地が大きいと考える。その理由は前回のレポートで詳細に述べたのでそちらを参照して欲しい。ここではその理由のひとつである世界的な金融緩和の効果を再度強調したい。

昨日、ECB(欧州中央銀行)は0.25%の利下げに踏み切った。南欧国債の大量購入やLTRO(資金供給オペ)第3弾などの非伝統的措置はなく、「切り札」を温存した格好だ。これに対してマーケットは不満足との反応を示した。しかし、世界の中央銀行が一丸となって金融緩和に動いていることを過小評価しているように思われる。ECBは0.25%の利下げだけでなく、銀行がECBに資金を預け入れる際の預金ファシリティー金利も0.25%引き下げて0%にするゼロ金利政策を導入した。銀行がECBにお金を置いておくインセンティブがなくなるため、市中に資金が回る可能性がある。

予想の範囲内とこちらも市場の反応は限られたものの、イングランド銀行も資産買い入れプログラムの規模を500億ポンド増額して3,750億ポンドとすることを決めた。中国も利下げに動いた。中国人民銀行は6月に続いて追加的な利下げに踏み切った。貸出基準金利を期間1年物で0.31%下げ、預金基準金利は1年物定期預金で0.25%下げる。注目は利下げ幅を拡大したことだ。最近の中国は0.25%刻みで政策金利を変更してきたが、今回は貸出金利の下げ幅を大きくしたのだ。デンマークの中央銀行も貸出金利を0.25%引き下げ0.2%にすると発表した。デンマークは自国通貨クローネを対ユーロで安定させることを金融政策の目標としているからECBの利下げに追随したものだが、驚いたのは政策金利の一つである譲渡性預金(CD)の金利も0.25%引き下げ、マイナス0.2%とした。ロイター通信によると、同金利がマイナスになるのは初めだという。これはECBのゼロ金利政策よりはるかにアグレッシブな措置だ。

このように世界の中央銀行はいっせいに金融緩和を行っている。これに対して市場の反応は鈍い。敢えて無反応を決め込むことで更にアグレッシブな政策を「催促」しているのか、あるいはまだ評価を決めかねているのか。おそらく評価仕切れていないというのが本音のところだろう。

いまでこそ欧州債務危機対応に絶大な効果を発揮したとの評価が確立しているECBのLTROだって当初、市場では懐疑的だった。ECBがLTROを決めたのは昨年12月8日の理事会だった。そして1回目の実施が12月21日。金利は政策金利である1%、金額は無制限で応じるとした。イタリア、スペインの銀行を中心に523の金融機関が、合計で4,891億ユーロに上る資金をこのオペにより調達した。それでもまだ市場はこの効果をすぐには実感しなかった。事実、当時もっとも危機的状況にあったイタリアの国債利回りは12月を通じて一本調子に上昇し続け、年明け1月には危機的水準とされる7%の大台に再び乗ってしまった。



なぜならその巨額な調達資金がECBの当座預金にそのまま置かれていたため、金融機関にとって単なる「安心保険」であり、市中への資金還流効果はないと見られていたためだ。しかし冷静に考えればイタリアやスペインの3年国債の利回りが6%を超え、1年以内に満期を迎える短期国債の利回りですら1%を上回っていた状況で、債券市場へ徐々にこの資金が向ったのは当然の結果だったと言える。イタリアの国債利回りは年初の7%乗せでピークアウトし、その後は一気に低下、急速に欧州債務不安は後退することになったのである。

いずれ、この世界的な金融緩和の効果がじわりと市場に出てくるものと考える。

まだ上があると考える次のポイントは、ここまでの戻りは「売られ過ぎの反動」「買戻しに過ぎない」というものだ。筆者が従前から奇異に感じている市場関係者のコメントのひとつに「所詮、買戻しに過ぎない」というものがある。相場が上がっても「買戻しの範囲内」と、否定的なニュアンスを込めて伝えられるこのコメントだが、買戻しのいったいどこが悪いのか。売っていた向きの買戻しだろうが、新規の買い持ちのポジションだろうが、「買うこと」には変わりない。

確かに、ここまでの戻りは、売られた分のリバウンドであった。グラフは5月と6月のファクター・リターンを示してある。ファクター・リターンとは財務データやレーティング情報、過去の月次リターンなどの個別銘柄の特徴を示す指標を説明変数、個別銘柄の収益率を非説明変数として回帰分析を行った際の回帰係数のこと。簡単に言えば、PERやPBRによる銘柄選択がうまくいったのかダメだったのかを統計的に測定するものと思えばよい。



これを見て明らかなように6月相場は5月に物色された傾向の裏返しである。6月のファクター・リターンは5月のファクター・リターンと符号が逆になっていることが見て取れよう。過去1ヶ月リターンのファクター・リターンが▲2.33と大きなマイナスの値になっているが、これだけでも直近パフォーマンスが良かったものが売られ、悪かったものが買われたことが分かる。中身を見ても、PBRの効果が回復したり、為替感応度の高い銘柄のパフォーマンスが良かったりと先月と逆の結果になっている。自己資本比率のファクター・リターンがマイナスになっているのは自己資本比率の低い銘柄のパフォーマンスが良いことを示しており、市場のリスク回避姿勢が緩和されたことが分かる。

興味深いのはPBRの効果は回復したが、同じバリュー系ファクターであるPERの効果が反落してしまったことだ。自己資本利益率(ROE)も効いていない。この点から言えることは、足元の戻りは、これまで売られたことの反転であり、企業の業績に着目した買いではないということである。つまり「買戻しの域を出ていない」のである。これは悪い意味ではない。市況が反転上昇に転じる、ごく当たり前のプロセスとしてまず買い戻しが入る。それから新規の買いポジションが積み上げられている。この次のステージとして、すなわち「買戻しの域を出る」時には業績に着目した銘柄選択が物色の中心になってくるだろう。今月後半から始まる4-6月期の決算発表がそのきっかけになると考えている。流動性相場、金融相場から業績相場へうまく切り替わるか注目したい。

市場の、ごくまだ少数に過ぎないが、そうした好業績を材料に買われている銘柄がある。例えばニコンなどはその典型だろう。直近で年度末の高値を抜いて年初来高値をつけてきた。2008年9月末以来、3年9カ月ぶりの高値である。こうした動きが徐々に相場全体に広がってくれば、日経平均は1万円近くまで戻すものと考える。ニコン同様、力強い値動きとなっているものの代表と言えばソフトバンクだが、他にもローソン、日立キャピタル、パーク24などが挙げられる。いずれも好業績銘柄だ。











<まとめ>
・世界の中央銀行が金融緩和を進めている。市場の反応はいまのところ限られているが、いずれ金融緩和の効果が出てくるだろう。
・足元の相場は売られ過ぎの反動で買戻しが中心。業績をテーマに物色する次のステージはまだこれから。今月後半から始まる決算発表で好業績に着目した買いがどれだけ広がるか注目したい。


(チーフ・ストラテジスト 広木 隆)

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