実際に、数値的な結果も出ている。リンクアンドモチベーションが提供するモチベーションクラウドを利用して、Azitの社員満足度を調査したところ、2019年の4月と7月でスコアを比較すると、拡大期には下がることの多い「情報伝達」や「歴史の共有」のスコアが上がっていた。

「組織の拡大期は階層や機能が分化するため、タテヨコのコミュニケーションが滞りがちです。結果として、現場が経営へ不信感を抱くようになるケースが多い。Azitのスコアが上がっているのを見ると、こうした情報共有の問題に対して、社内ラジオが効果的な施策であるとわかります」(リンクアンドモチベーション組織開発本部・依光宏太氏)

手間をかけずに人柄が伝わる「声」の発信

 Azitでは、毎週2本のラジオ番組を配信している。1本目は、吉兼社長が配信する「Into the startup」。社長が最近感じた学びや外部情報の共有、Azitの歴史について伝える番組だ。社長が行った意思決定の裏側にある考え方を共有することが狙いだ。

 入社したばかりの社員からは「遡って聴くことで、会社が成長していくと共に変わってきたこと、変わらずに大切にしてきたことを、追体験できました。声を通すと当時の温度感がそのまま伝わるので、いち早くチームの一員としての自覚を持てた」と好評だ。

 また、発信者側である吉兼社長自身にも、メリットがある。

「社員数が増える時期は、経営者と社員との密なコミュニケーションが必要です。しかし、対面だと話せる人数に限りがあるし、テキストでの伝達だと負荷が大きい。その点ラジオはマイクに向かって話すだけなので、気軽に発信できます。また、話し口調や声の抑揚で温度感も伝わりやすく、とても効果的ですね」(吉兼社長)

収録風景(提供:Azit)

 もう1本の番組は、共同創業者である須藤信一朗CCO(チーフ・カルチャー・オフィサー)がパーソナリティを務める「Everyday Azit」。新入社員や、社内で面白い動き方をしている社員と雑談することで、社員の人柄を伝える番組だ。

 社内ラジオのヘビーリスナーだという作井英陽コーポレート本部長は、「普通の自己紹介よりも踏み込んだ人柄を知ることができるので、一体感の醸成に大きく貢献していると思います」と評価する。

社員に限定配信ができるVoicyの「社内報」機能

 ラジオ配信の主な目的は社内での情報共有のため、社外の人は聴けないようにしている。

Voicyのプラットフォーム上で限定配信しているAzitのラジオ番組(提供:Azit)
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「社内の人にしか話せないことにこそ価値があると思うので、“社員限定”での配信にこだわりました。しかし、当初は限定配信できるプラットフォームが見つからず、クラウド上にアップしてURLを共有していたんですが、UIが悪いせいかあまり聴いてもらえませんでした」(油谷部長)

 配信方法に困っていたところ、2019年4月に、音声プラットフォームを提供する「Voicy(ボイシ―)」が社内報として活用できる社員限定公開のサービスを開始したため、すぐに活用を決めた。

「ストレスを感じると聴いてもらえないので、UIは重要でした。Voicyはスマホで見やすく、バックグラウンド再生も可能なので、一気に聴きやすくなったと思います」(油谷部長)