X世代(1965年~81年生まれ)の苛立ちは限界に達している。ベビーブーマー世代ほど昇進の恩恵を受けておらず、ミレニアル世代ほど将来を期待されてもいない。だが実際には、X世代が果たしてきた役割は大きく、その能力や成果が過小評価されていると筆者は指摘する。有能なX世代のリーダーを自社につなぎとめるうえで有効な3つの対策を示す。


 米国のX世代(1965年~81年生まれ)といえば、文化的アイコンとしては、モリー・リングウォルド、カート・コバーン、アラニス・モリセットなどが挙げられる。この世代は昔、「スラッカー世代」――つまり無気力で、皮肉的で、反体制的な人々と見なされてきた。とはいえ彼らのほとんどは、それ以前の他の世代と同様、歳を重ねて子どもを持つにつれて、安定と伝統を受け入れる姿勢を強めるようになった。

 しかし、無気力という彼らの評判は、職場で足枷となっているのかもしれない。新たなデータによれば、X世代は「リープフロッグ」(追い越される)世代であることが明らかになった。つまり、昇進を見送られる傾向が、他世代の同等職者よりも高いのである。

 当社DDIは2018年末、全米産業審議会およびEYと共同で、リーダーの昇進度合いを世代別に検証すべく、さまざまな業界・地域における2万5000人以上のリーダーから集めたデータを分析した。すると驚くことに、X世代の過半数(66%)は、過去5年間で昇進した回数は1回またはゼロであった。同等職のミレニアル世代(52%)およびベビーブーマー世代(58%)に比べると、昇進頻度が有意に低いのだ。両者は、同期間で2回以上の昇進を経験する傾向がより高かったのである。

 この結果は予想外であった。今日の30代後半から50代前半であるX世代は、キャリアのピーク期に入っており、めきめきと昇進しているはずだからだ。

 しかし一方、ベビーブーマーの多くは、それ以前の世代よりも大幅に長く仕事を続けるようになっており、このことがX世代の昇進度に影響している可能性がある。報道によれば、ベビーブーマー世代の半分以上が引退を遅らせており、70歳やそれ以降まで働く人も少なくない。経済的不安と医療費の上昇が理由であるという。その結果、高年の労働者は仕事に長くしがみついているだけでなく、より高給の役職への昇進をいまだに目指しているのだ。

 他方のミレニアル世代はといえば、この数年間はメディアの注目の的となっている。金融危機のさなかにキャリアの低調なスタートを迎えた後、今日では彼らの多くが、「失われた時」を埋め合わせて稼ぎを増やそうとしている。学生ローンで多額の負債がある人はなおさらだ。

 さらに、企業はミレニアル世代の能力をどう育てるべきかという課題に、大いに注力している。彼らはデジタル時代に成人となる初めての世代であり、仕事の習慣と価値観のあり方も変化している。

 ベビーブーマー世代とミレニアル世代に関心が注がれる結果、X世代は往々にして粗末に扱われ、この傾向は長らく続いている。我々が過去に実施した複数の世界的なリーダーシップ調査を振り返ると、X世代の昇進頻度は一貫してミレニアル世代より20~30%低い。

 しかし同時に、我々はあることを発見した。X世代は職場で、きわめて重要ながら過小評価されがちな貢献をしているのだ。