――今の自分のルーツは何だと思いますか。

 起業するというビジョンが明確になったのは、大学に入ってからです。真剣に将来を考えたときに、スティーブ・ジョブズやビル・ゲイツの生き方に憧れを抱きました。個人だと到達できない社会貢献や夢を、組織を作ることで実現しているからです。

――どんな子どもでしたか。

 いたずら好きな性格で、よく先生を困らせていましたね(笑)。

 当時通っていた大学の女子学生の顔のデータをたくさん集めて、大学の平均レベルの顔を出して大学内で話題になったことがありました。それから、先生のPCに入り込んで試験問題をハッキングしたこともあります。

 決してカンニングがしたかったわけではなく、自分のプログラミング能力がどのくらい通用するのか試してみたかっただけなので、ハックしたのは他の学年の試験問題だったのですが、見つかって5000字の反省文を書かされる羽目になりました…。深く反省しています。

――なぜ、360度カメラに目を付けたのですか?

 元々は動画ライブアプリを運営していて、「コンサートの臨場感や感動を、もっとまわりとシェアするにはどうしたらいいのだろう」と考え始めたのがきっかけです。“記憶をそのまま記録にして伝えたい”と思い試行錯誤した結果、360度カメラにたどり着きました。

並外れた開発スピードの裏にあるものは

――事業が成長した理由は何だと思いますか?

 主に二つあります。一つは「目標がはっきりしている」ことです。“便利に効率よく人の生活を記録する”というゴールを、忘れないように事業をつくっています。迷わずまっすぐ進んでいるから、横道にそれません。

 もう一つは「成長スピードが速いこと」です。進める上で出てくるリスクを事前に予測しておくんです。そうすれば、壁が見えたときにスピードを落としていったん落ち着くのではなく、リスクの高くない道を選んで進むことができます。

 例えば、低い山から高い山に移動したいとき、低い山を降りてから高い山を登るのでは効率が悪いですよね。低い山から高い山へ直接橋をかけた方が、安全だし早いです。

――スピード感は、新しい製品を発表する頻度からもわかります。次々と新製品を作る理由は。

Insta360 GOはランニング中も撮影できる(提供:Insta360)

 カメラ業界は、市場やビジネスの変化が非常に激しいです。ハードウェア・ソフトウェアの両面で、より使いやすくニーズに合ったものが次々と出てきています。常に新しい技術を形にしなければ、収益を最大化できないのです。そのため、リスク管理はきちんとした上で、スピードを落とさないように努めています。

――製品を開発する上で意識していることはありますか。

 常に今から2年後のトレンドを追うことです。2年先の技術を先読みして、市場の声をチェックします。

競合も真似できない、高いソフトウェア技術

――現在、360度カメラでは売上高で世界トップ(数字非公開)とのことですが、 リコーのTHETAやGoProなど競合他社をどのように見ていますか。

 創業当初は市場のニーズがわからず、他社のカメラを研究しましたが、今の市場をつかめてからは、あまり気にしなくなりましたね。現状の製品では解決できていない、消費者の新しいニーズだけを意識しています。

 また、創業時はソフトウェア会社だったので、競合他社とは根本的な発想の仕方が違うように感じます。他社はハードウェアの技術に優れているところが多いので。例えば、同じ手ぶれ補正技術でも、他社はハードウェアで手ぶれ補正をしようとするのに対して、うちはソフトウェアで補正技術を開発します。