IR構想当初の理想と
かけ離れた立地に

 要するに、日本に外国人観光客が増えてきたけれど、東京、箱根、富士山、名古屋、京都、大阪などを巡る広域観光周遊ルート、ゴールデンルートしか行かないので、IRでそのルートから外れた地域へと「送客」しようというのが、IRというものの、そもそもの狙いだったのだ。

 しかし、そんな「理想」は今やすっかり忘れられ、3つできるというIRのうち2つはバリバリのゴールデンルート上にある。そう、大阪と横浜だ。

 なぜ法案が通った途端、しれっとした感じで、そもそもの意義を忘れたしょうもない方向へ流れているのか。

 一つはIR事業者の「意向」である。

 IRでインバウンドを地方へ波及、と言っているのは実は日本側だけで、当のIRを運営するサンズだ、MGMだという世界的企業は、そんなワケのわからない日本の田舎などで開業をしたくない。彼らが狙っているのは、東京、大阪という大都市で暮らす裕福な日本人富裕層のサイフだからだ。

 中国人観光客のサイフは、マカオ、シンガポール、フィリピンなどのIRが既にがっちり捕まえている。日本はパチンコや競馬にドハマりするキャンブル依存症も多く、しかも、高齢者はタンス預金で世界一というほどキャッシュを溜め込んでいる。つまり、IR業者にとって、日本市場は開拓しがいのある”宝の山”なのだ。正直、地方の活性化だとか観光公害だとかは、どうでもいいのである。

 この“事業者ファースト”に拍車をかけているのが、政治の利権だ。

 維新の会の大阪、菅官房長官の横浜、二階幹事長の和歌山、などなどIR有力候補地とされているのは、わかりやすいくらい有力政治家のいるエリアだ。つまり、令和の時代になっても、この国の大型公共案件というのは、強い政治家が地元へ引っ張ってくるものという位置付けなのだ。