部下から退職を告げられたら、あなたは衝撃を受けるだろう。突然姿をくらました場合は、なおさらである。貴重な人材の流出という大きな困難は、組織にとって重要な学習機会にもなる。ただし、退職者面談を通じて組織の課題を探るのは難しい。本人が本音を語らないケースは十分に想定されるし、失踪した場合は面談の機会すら持てないからだ。筆者らは、社員の退職を学習機会に変えるための3つの方法を提案する。


 今世紀に入り、米国ではかつてないほど自主退職者が増えている。部下の退職は、マネジャーにとって腹にパンチを食らったような打撃があり、仕事の面だけでなく、精神的にも慌てさせられる。

 特に痛手が大きいのは、突然来なくなったと思ったらそのまま音信不通になり、姿をくらます社員だ。なかには、入社後わずか数日でそれをされるケースもある。

『ニューヨーク・タイムズ』紙のベストセラー『PRINCIPLES(プリンシプルズ)』著者のレイ・ダリオが指摘しているように、貴重な社員を失うといった困難に直面したときこそ、組織にとって重要な学習機会である。

 この機会を活かせるかどうかは、退職の根本原因を探るつもりが、会社にあるか否かにかかっている。だが、マネジャーも人事担当者もダメージコントロールに追われるあまり、実際に何が起きて、今後どうすれば同じことが繰り返されずに済むのか、それを理解するための徹底した「検視」ができていないのが現状だ。

 もちろん、多くの企業が退職面談を実施しており、本来はそこで得た気づきを社員の離職率の低下につなげられるはずだ。しかし、退職面談制度には重大な欠陥がある。

 社員が無断欠勤後に行方不明という、最悪の衝動的退職のケースでは、面談を行う機会さえない。また退職面談が行われた場合でも、調査によると、離職の理由を正直に話さない社員が多い。悪い印象を残したくないから批判的なことは言わない、という人もいれば、会社に変わる気がないから何を言っても時間の無駄だと感じている人もいる。それだけでなく、去っていく社員の中には、自分を粗末に扱った会社に、自分が辞める本当の理由を知る権利はないと思っている人もいる。

 要するに、退職面談が意味を持たないケースが多いのだ。

 では、企業は社員の離職に対して、どのような建設的な対応――社員を失う痛みを前進の糧にする対応――ができるのだろうか。離職者自身と、最近部下が離職したというマネジャー数百名の体験を調査した結果として、3つの方法をお勧めしたい。