将来の年金は「手取り」で情報発信すべき、年金財政検証に要注意Photo:PIXTA

5年に一度の財政検証
公的年金の将来に大きな変化なし

 先週、5年に一度行われる公的年金の財政検証の結果が報告された。将来の経済状況を経済成長や高齢者の労働力参加などが順調な場合から、そうでない場合まで複数のケースに分けて、年金の受取額が将来の現役世代の収入に対してどれくらいの比率になるのかの試算が示された。

 印象を一言で言うと「ほぼ予想通り」だ。前回の検証が行われた2014年に示された結果と大きく変わるものではない。何十年にもわたる経済状況を想定する長期の試算なので、よほど大きな前提の変化がない限り、大きく変わらないのが当然だ。

 年金を受け取るまでに30年以上あるような人が、「夫がサラリーマンで妻が専業主婦」という政府が設定する「モデル世帯」に該当する場合を例にして、試算結果を見てみよう。最も楽観的なケースでも将来の現役世代の収入に対して51%強、悲観的なケースでは30%代半ばくらいの年金受給額になると説明されている。将来はこの中間のどこかにあると、一応は考えられよう。

「想定が大ざっぱ過ぎるのではないか」と不満に思う読者がいらっしゃるかもしれない。しかし、将来の経済状況の見通しを狭い範囲に固定して想定できると考えることの方が非現実的だろう。