誰もが仕事と私生活の両方の充実を求めているだろう。従業員のそうした期待に応えるために、積極的な取り組みを始める企業が増えてきた。たとえば、遠隔勤務やフレックスタイム、サバティカル休暇などは、その代表である。筆者らの調査によると、マネジャーの理解が乏しいことで、従業員がせっかくの制度を十分に活用できていない現実が見えてきた。


 誰もが、豊かで有意義な人生を送りたいと思っている。職場でも家庭でも、そのどちらも犠牲にすることなく。

 世界中の働き手が柔軟な勤務形態を求めるようになっており、企業側もその希望に応えるべく、家庭生活を支援するさまざまな制度を打ち出している。欧州では、遠隔勤務やフレックスタイム、コンプレストワークウィーク(1週間の労働時間を変えずに就業日数を少なくする勤務形態)、(有給、無給の)休職、それにサバティカル休暇が最も一般的なものだ。

 だが、このような制度は、理論上は素晴らしく見えるものの、従業員に意図せぬ影響をもたらすものが少なくない。

 ●柔軟な働き方は必ずしも優れたワーク・ライフ・バランスにはつながらない

 遠隔勤務をしていると随時、デバイスを使って同僚とコミュニケーションできるため、常に張り詰めた勤務状態が続き、個人でコントロールできる時間を保つのが難しくなりがちだ。常に職場とつながっていることで、仕事と仕事以外の活動の境界線がぼやけるおそれがある。

 ●家族休暇や育児支援は、従業員の間に不公平感を生む可能性がある

 こうした制度は通常、家族の世話をする責任のある人だけに適応される。同じようにワーク・ライフ・バランスを望んでも、家族への差し迫った責任がない人に適用されることはきわめて少ない。

 ●柔軟に働く制度があっても、従業員の大半はその利用に消極的である

 制度を利用すると仕事に対する熱意が乏しいと見なされ、キャリアにとってマイナスになるのではないかと多くの人々が危惧している。

 こうしたマイナス点を組織がどう克服すればよいかを探るべく、我々はイタリアで働く親400人以上の経験を調べる研究を行った。調査対象者の58%が男性、42%が女性で、平均年齢は43歳だった。

 調査対象者には、自分の労働環境、直属の上司、組織文化に関して1から5までの点数で評価してもらった。支援度が最も高ければ5点、最も低かったら1点とした。我々はさらに、勤務先に家庭生活を支援する制度がある場合は、どのくらいの頻度で使うかについても尋ねた。

 この研究から、企業が従業員の健全なワーク・ライフ・バランスを生み出そうとするなら、次の2つの主要点に狙いを絞る必要があることがわかった。