なぜ空き家が増えるのかといえば、大きな要因の1つに「親からの相続」が挙げられる。マンションも空き家が増えている。なぜ空き家が増えるのかといえば、大きな要因の1つに「親からの相続」が挙げられる(写真はイメージです) Photo:PIXTA

全国的に空き家の増加が問題になっている。抜本的な解決策はなく、少子高齢化と人口減少の影響もあって、空き家の数はどんどん増えている。特に、マンションを含む共同住宅の空き家率は、全国の空き家の半数以上を占めているが、マンション管理組合にとっても、空き家の増加は見過ごせない問題だ。(株式会社シーアイピー代表取締役・一級建築士 須藤桂一)

全国の空き家総数846万戸のうち
マンションを含む共同住宅は475万戸

 この数年、住宅の空き家問題がクローズアップされることが多くなってきている。平成30年に実施された「住宅・土地統計調査」によると、全国の総住宅数6242万戸のうち、空き家の数は846万戸、空き家率は13.6%で、過去最高の数値となった。前回の調査(平成25年)では820万戸だったものが、5年で実に26万戸も増加したことになる。

 空き家の内訳を見てみると、一戸建てが317万戸(37.5%)、長屋建てが50万戸(5.9%)、共同住宅が475万戸(56.2%)となっている。共同住宅とは「1棟の中に2つ以上の住宅があり、廊下・階段などを共用しているもの」という定義で、分譲マンションや賃貸アパートなどもこれに分類される。全国の空き家のうち、マンションを含む共同住宅が半数以上を占めていることになるわけだ。

 なぜ空き家が増えるのかといえば、大きな要因の1つに「親からの相続」が挙げられる。例えば、ひとりっ子同士の夫婦の場合、両者の実家が持ち家であるとすると、いずれは夫の実家と妻の実家をそれぞれ相続することになる。加えて、夫婦がすでに住宅を所有している場合には、夫婦で3軒の住宅を持つことになるわけだ。当然、夫婦だけですべての家に住むわけにはいかないため、たいていはそのうちの2軒が空き家になる。

 実家が一戸建ての場合は、解体して更地にすれば、固定資産税だけで土地を維持していくこともできるが、やっかいなのは分譲マンションの場合だ。当然マンションを解体することはできないので、所有者は固定資産税に加えて、管理費と修繕積立金も支払う必要がある。これが3軒分ともなれば、その費用はかなりの負担になるはずだ。