企業には優秀な人材を採用し、彼らに定着してもらうことが求められる。人材維持の施策には一般に、退職者面談や従業員のエンゲージメント調査が活用されている。だが、それによって過去を振り返ることはできるが、退職を検討中の社員を見極めることはできない。筆者らは、ビッグデータと機械学習により、従業員の離職リスクをリアルタイムで予測する方法を見出した。


 企業は、従業員の離職は高くつき、損害も大きいと知っている。そして、能力のある優秀な従業員を引き留めることは、コストの抑制のみならず、競争優位を維持し、知的資本を守るうえでも役に立つと知っている。

 だが、人材維持のための施策として、たいていの企業が使うのは、過去を振り返る2つのツールしかない。

 1つ目として、退職者面接がある。これは、なぜ辞めるという選択をしたのかをよく理解するために実施される。だが通常、この時点で退職希望者を引き留めるのは、もう手後れだ。2つ目として、エンゲージメントを評価する年次の従業員調査が利用されている。この調査の結果を後日、組織を辞めた人と対比するのである。うまくいけば、離職を予測してくれる妥当な要因を見出せるかもしれない、というわけだ。

 ここでの問題は、どちらのデータも経営陣に対して、誰が離職を検討している可能性があるかをリアルタイムで示してくれないことである。

 我々は最新の研究で、ビッグデータと機械学習アルゴリズムの活用に重点を置いた、個人の離職傾向の指数を開発した。誰が転職を考えている可能性が高いかに関する、リアルタイムの指数である。

 我々は、離職に関する学術研究を基盤として、これらの予測モデルを開発し、一連の研究を実施した。その結果、ある人物が社外からのオファーを検討し、最終的に退職する見込みをリアルタイムで予測する指数の開発は、可能であることが示された。