アリババは先週、海外高級ブランドの電子商取引を手掛ける考拉海購(カオラ)と音楽配信サービス企業に27億ドルを投じると発表し、新戦略を採用する柔軟さがあるとアピールした。

 ただ中国のデジタル経済専門メディア、36krの調査部門に属するLiu Yiming氏は「アリババが新しいイノベーションや潮流を見つけ出そうと思っても、以前よりは難しくなる。張氏にとって大きな試練になるだろう」と語った。

 中国の電子商取引市場の売上高伸び率は、今年上半期が17.8%と前年同期の32.4%からほぼ半減したことが、中国国家統計局のデータで明らかになっている。

身の振り方

 馬氏がトップ退任を発表したのは昨年だが、創業者が55歳という若さで身を引くのはこれほど大規模で革新的なハイテク企業では異例と受け止められた。

 実際、馬氏の下でアリババはアジアで最大の上場企業となり、現在の時価総額は4600億ドルに達する。従業員は10万人を超え、金融サービスやクラウドコンピューティング、人工知能(AI)にまで事業を拡大してきた。

 投資家は、馬氏が退任のあいさつで今後どのように経営に関わっていくつもりか、またアリババの幅広い戦略の方向性を主導し続けるのか知りたがるだろう。同氏はこれまで、経営陣の育成を継続していく考えを示している。

 馬氏は慈善事業や教育事業にもより時間を費やす見込みだが、引き続きアリババのパートナー制度のメンバーも務める。パートナーは38人で、取締役会とは別にアリババの統治を担う。

 一方、中国で馬氏の成功譚はもはや伝説となり、ほとんど教祖のような扱いを受けているとはいえ、同氏の経営にもいくつかの「ほころび」があり、張氏が修復する必要が出てくるとみられる。例えばアリババの国際展開は苦戦し、米決済企業マネーグラムを12億ドルで買収する計画は不首尾に終わったのが代表例だ。

 また消費者向け電子商取引市場「淘宝(タオバオ)」は、海外ブランド企業から海賊版の温床と非難され、米国の知的財産を侵害する「悪質業者」の米政府リストに加えられている。

 馬氏は今年、ハイテク企業の社員は夜も週末も働けと発言し、中国の労働文化について全国的な議論を巻き起こした。

 張氏が率いるアリババがどこに向かうかはよく分からないとしても、10日のパーティーで馬氏が得意のショーマンシップを発揮するのはまず間違いない。以前に行われたイベントなどでは、同氏はマイケル・ジャクソンの衣装で登場したり、パンクロッカーの格好をしたりして音楽の演奏をしたこともある。社員の1人は「ジャックは最後の舞台に、むろんドラマチックな姿で現れる。長い、長いセレモニーになる」と予想。その間は「大勢の社員が、職場を離れることになる」と付け加えた。

(Josh Horwitz記者)

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