自分が仕事に何を求めているかは理解していて、いまの職場でそれを達成できないことはわかっている。にもかかわらず、あなたはなぜそこで働き続けるのだろうか。他の選択肢があることをわかっていながら、そこに留まり続ける理由は何か。筆者は、多くの人が「理想の仕事」に就けない4つの理由を提示する。


 あなたにとって「理想の仕事」とは何だろう。人が仕事に何を求めているかは明確にされているが、実際にその条件に基づいてキャリア選択をしているかというと、必ずしもそうではない。その条件をみずから認識しているにもかかわらず、である。

 ほとんどの人が仕事に求めているものは、以下の3つにすぎない。

・自分の強みを発揮でき、伸ばせているという意識:役割以上の業績を上げ、学習機会を通じて成長するチャンスを与えられることによって得られる。

・仲間意識または帰属意識:互いの尊重に基づく社員同士の公正な関係によって生まれる。認められているという意識。企業文化が従業員満足を左右する重要な要因であるのは、このためである。

・意義や目的意識:社会にとって重要で、自分の価値観や動機にも沿った仕事に打ち込めているという感覚。

 もちろん、世界中の誰もがこの三拍子揃った仕事に就けると思うのは無邪気すぎるだろうが、それと同時に、誰もがマクロ経済環境や潜在能力や才能に関係なく、これを目指して実現することを期待されている。その結果、ほとんどの人がそれぞれの「理想の仕事」を追求するか、少なくともいまの仕事を改善する――専門家のいう「ジョブ・クラフティング」――欲求を持っている。

 それは悪いことではない。自分の能力や興味と仕事が一致すれば、気分にもパフォーマンスにもプラスの影響があるだろう。

 これは自明のことすぎて、科学的実証など不要なように思える。それでも研究はなされており、ジョブ・クラフティングは案の定、従業員エンゲージメントやエンプロイアビリティ(「望ましい職を得、維持し、キャリアの終わりまで市場性を持ち続ける能力」と定義される)と正の相関があることが示されている。別の調査では、ジョブ・クラフティングが労働者のウェルビーイングを向上させるという結果も示された。

 したがって問題は、むしろこちらのほうだ。「仕事に何を求めているかを自覚しているにもかかわらず、そして他の選択肢があるにもかかわらず、職選びに失敗する人が大勢いるのは、なぜなのか」

 調査結果から、いくつかの理由が浮かび上がった。