銀行・証券断末魔その1

銀行や証券会社の本業不振ぶりを映し出した、「銀行・証券断末魔」特集(全5回)。金融業界で再編機運が高まる中、SBIホールディングス社長の北尾吉孝氏は地方銀行と手を取り合い、「第4のメガバンク」をつくるとぶち上げた。北尾社長が描く“金融再編”の青写真に迫る。(聞き手/ダイヤモンド編集部 田上貴大)

金融を取り巻く環境は激変
対応できない証券は瀬戸際を迎える

――銀行や証券会社に、ビジネスモデルの変革が求められています。北尾社長は何を見据えているのでしょう。

 かつて(米マイクロソフト創業者の)ビル・ゲイツ氏が、「銀行はなくなるが銀行のファンクション(機能)はなくならない」と言っていましたが、それは至言だと思います。

 私たちの住信SBIネット銀行は(事業会社と提携して新しい商品を開発する)「ネオバンク化」というものを目指し、どんどんAPI(外部のシステムと結ぶための技術仕様)を開放しています。すでに(口座残高の参照など)300以上もの銀行の機能を、さまざまなベンチャー企業を中心に提供しました。

 そうした徹底的なアライアンスにより、ネオバンク化を進めていきますが、この流れに乗ってこないところは、相当しんどくなるのではないでしょうか。

 これは銀行業だけではなく、証券業についても同じです。今年4月にSBIネオモバイル証券を立ち上げましたが、これは新しい顧客層、特に20~30代を中心に広げていくためです。そして、スマートフォンで全ての金融ビジネスを行う状況をつくろうとしています。

 ネオモバイル証券や、比較的若い人が取引している暗号資産(仮想通貨)の領域、それからFX(外国為替証拠金取引)トレード。これらが全てシナジーを生むことで、若い人を全部抱え込んでいく取り組みを、グループを挙げて進めています。

 今、大手証券会社の顧客の多くが、50代や60代、そして70代以上です。例えば野村證券の主力となる60~70代の人は、10年たてば70~80代になります。それ以上の人は90歳を超えてくるので、野村證券のセールスマンが営業できる状況ではなくなっていきます。

 また、同じ銘柄の同じ株数を買うための手数料も(野村證券はSBI証券と比べて)23倍取るわけで、そのやり方では成り立たないと考えるべきだと思います。今、金融を取り巻く環境が激変していて、その変化に対応できるかどうかの瀬戸際に来ているのです。

 それを何とかするため、支店の数を減らしたり、セールスマンの数を減らしたりということを、銀行も証券会社もみんなやってきていますね。

 私はそれを見て、「うちはうまくいっている」と喜んでいるわけではありません。特に、非常に大きな社会経済的インパクトを及ぼすのは、地方銀行の衰退です。だからSBIグループとして何かできないかと考え、いろんな手を打ってきました。