再燃する「日本化」論、為替市場でのリスクを考えるリーマンショック後に議論された、欧米諸国が日本のような状況に陥る「日本化」が、最近、再び注目されている(写真はイメージです) Photo:PIXTA

「日本化」論の再燃
主要国が日本と似た状況に

 リーマンショック後に米経済が低迷し、欧州でも債務危機問題が深刻化した2011年頃、欧米諸国が日本のような状況に陥る「日本化」(Japanification/Japanisation)の議論が高まった。最近でも、米中貿易戦争の激化で世界景気の減速感が広がる中、今年5月から8月にかけて世界的に金利が大幅に低下し、マイナス金利となる国債市場が拡大する過程で、主要国・地域の「日本化」に関する議論が再燃した。

「日本化」の定義は様々だが、大規模な金融緩和にもかかわらず低成長・インフレ鈍化・金利低下が継続することが「日本化」とされ、その背景の1つとして生産年齢人口の減少が挙げられることが多い。実際、米国、ユーロ圏、豪州、中国のコアインフレ率、成長率、10年金利、生産年齢人口を見ると、長期的趨勢としてコアインフレ率やGDP成長率の鈍化、10年金利の低下、生産年齢人口の増加率の鈍化・マイナス化が起きており、過去の日本と似た状況になっている。

「日本化」と為替①
他国の「日本化」と円高

 為替市場では、主要国・地域の「日本化」の影響として、主要国・地域の金利水準が日本に近づく動きや、主要国・地域間の「日本化」のスピードの違いを通じて顕現化することが考えられる。他国の金利水準が日本に近づくことで、為替市場では他国の通貨安と円高が考えられるが、こうした影響の波及チャネルは、通常の欧米諸国の景気悪化・金利低下局面と大差ない。独仏の中長期金利はすでに日本を下回っているため、ユーロ圏の経済状況が日本に近づく「日本化」は、為替市場ではテーマとなりにくく、金利水準が相対的に高い米国、豪州、中国での「日本化」が今後進行するかが焦点となろう。