プレゼンや対話の最中に「えーと」や「あー」といったフィラー(つなぎ表現)が頻出すると、伝えたい内容がまったく頭に入ってこない。発言者の不安や準備不足を象徴する行為だと捉えられてしまうからだ。だが筆者は、あえてフィラーを用いることが効果を発揮する場面が3つあると指摘する。


「So, um, I just think this is important.(つまり、えーと、私はちょっと、これが重要だと思うのですが)」――大切なプレゼンテーションやコメントをこんなふうに始めてしまう人を最後に見たのはいつだろうか。

 一般に「フィラー(つなぎ表現)」と呼ばれる「訥弁(とつべん)」は、パブリックスピーキングで議論の的になることが多い。弱さやためらいの表れとして否定する人もいれば、誠実さや純粋さの表れとして擁護する人もいる。

「Um(えーと)」「Ah(あー)」「like(なんか)」といった表現はおなじみだろう。ほかにも「so(つまり)」(文頭に)、「right?(ですよね?)」(文末に)、「kind of(ある種の)」「sort of(一種の)」(文中で)、といった言葉も耳にする。どんな言語にもフィラーがあり、同じ組織の人は同じつなぎ表現を使う傾向がある。あなたが上司ならば、直属の部下は無意識のうちに、あなたのフィラーを模倣している。

 たまに使うだけならば、つなぎ表現は特段悪いものではない。だが使いすぎると、あなたの信頼や信用が失われてしまう。たとえば取締役会に対して強く訴えたいときに、一語ごとに「Um(えーと)」を入れたらどうなるか、想像してほしい。フィラーを絶えず使っていると、メッセージが損なわれる。

 カリフォルニア大学サンディエゴ校心理学教授のニコラス・クリステンフェルドは『ジャーナル・オブ・ノンバーバル・ビヘイビア』誌に発表した研究で、「『Um(えーと)』という言葉は不安や準備不足の表れではないようだが……平均的な聞き手には、そう捉えられてしまう」と指摘している。

 フィラーのほかにも、直接的な表現を和らげるための言葉やフレーズが、メッセージのインパクトを格段に弱めてしまうことがある。たとえば「Maybe this is irrelevant, but…(これは関係ないかもしれませんが)……」とか「I may be way off base here, but…(的外れかもしれませんが……)」といった言い回しだ。

 私が個人的に気になるのは「just(ちょっと)」という言葉で、それさえなければ力強い発言になるような場合は特にイライラする。たとえば「I just think this is a crucial moment for our company.(私はちょっと、これはわが社の正念場だと思います)」という使われ方だ。