労働環境はこの100年で大きく改善されているが、いまだに「燃え尽き症候群(バーンアウト)」の問題は解決されていない。それは従業員の心身を蝕むだけでなく、生産性の低下など企業にも重大な損失を招くことになる。筆者は、燃え尽き症候群の最も大きな要因として、リーダーの無能さを指摘する。リーダーが部下のストレスを取り除くどころか、彼ら自身がストレスの原因になっているケースがあまりに多い。本稿では、職場のリーダーシップを改善する4つのポイントを示す。
労働環境は、この100年で大きく改善した。それも裕福な国だけではない。世界の失業率は、2008年の金融危機以来下がっており、技術破壊によってつくり出された新しい職の数は、自動化された古い仕事の数を上回っている。
たしかにいまでも、とんでもない労働条件の企業や窓のないコールセンター、アスベストだらけの工場などが存在するが、大部分において、歴史上明らかに、いまほど被雇用者が恵まれた時代はなく、就職しやすい時代はない。
この工業化された世界で、被雇用者は消費者のような体験を望んでいる。
仕事を認められ、給料がよく、安定した職というだけではもはや満足できず、仕事に目的や意味を求め、天職を見つけ、自分の個性に合わせてジョブ・クラフティングしたいと思っている。柔軟な働き方、フェアな報酬、刺激のある業務、そしておそらく何より「本当の自分」を出していいという安心感を欲している。トップ企業は、こうした肝心な期待に応えられなければ、人材争奪戦で勝てないことを知っている。
それでもなお、常に浮上する未解決の問題がある。「燃え尽き症候群(バーンアウト)」だ。
米国一国だけでも、職場のストレスは、欠勤、生産性の低下、法的費用、医療費などで年間3000億ドルの損失を生み出している。案の定、ストレスと燃え尽き症候群が離職、事故、ケガ、薬物乱用の主要原因であることがいくつもの調査で示されている。就職先として人気の企業やトップ企業においてさえ、このことが問題になっている。
これは概ね、1つの問題に起因する。リーダーシップである。
理屈から言えば、リーダーは、困難なときの平穏と安心の導き手として、従業員や部下をストレスから守るべき存在だ。ところが現実には、ストレスを減らすよりも発生させていることが多い。
この問題は案外よく見られる。世界中の何百万という従業員が燃え尽き症候群、疎外、心身の健康の低下など、悪しきリーダーシップの影響に苦しんでいる。マネジャーの虐待的な態度が特に顕著な要因ではあるが、マネジャーの無能さがチームのやる気を削ぎ、ストレスになっていることもある。専門知識の欠如、フィードバックの与え方や受け方がわからない、ポテンシャルが理解できない、部下の業績を評価できないなどは、無能さ無資格さを表すよくあるサインの一部にすぎない。
従業員体験を向上させるにはまず、リーダーシップの改善から始めるべきだ。1つだけ改善するとしたら、それ以上に職場ストレスの減少に効果的な方法はない。そのためには、次の4つの要点について考えてほしい。