数代続く伝統企業に新しい知見を取り入れて、イノベーションを起こす後継者がいる。33年前、群馬県で“町の看板屋”として事業を開始したクレストは、二代目・永井俊輔氏の手によって、リアル店舗の顧客データを解析するテクノロジー企業に生まれ変わった。レガシー企業を変革させる永井氏の手腕に迫る。(ダイヤモンド編集部 塙 花梨)

 首都圏近郊エリアで植物やインテリア雑貨を扱うライフスタイルショップ「インナチュラル」。店頭には、イチオシの商品が展示されている。一見、よくある商品ディスプレイにすぎないが、実はこの中にはカメラが設置されており、顧客の行動データが解析できる仕掛けになっている。店舗前の交通量と視認量を計測することで、「どんな人が興味を持つのか」、「興味を持った人のうちどれだけが購買したのか」などがわかるのだ。

「インナチュラル」の店頭にある商品ディスプレイ。顧客の行動データが計測できるカメラを設置している 写真提供:クレスト 拡大画像表示

 ウェブでは広告の効果測定は当然のものとなっているが、店頭広告や交通広告といったオフライン広告の計測は進んでいない。店舗の特長やシーズンごとのイチオシをアピールできるショーウィンドウやディスプレイは、小売店にとって “顔”であり、売り上げに直結する重要な存在だ。しかし、その展示方法は、各店舗スタッフの感覚に依存してしまっているケースがほとんどだ。

 こうしたリアル店舗の店頭ディスプレイやショーウィンドウを活用した顧客関心度を測定ツール「esasy」を開発したのは、クレストの代表取締役社長・永井俊輔氏だ。「リアルな広告はすべて、計測されるべきだ」と語る、その眼光は鋭い。前述のライフスタイルショップ・インナチュラルはクレストホールディングスの傘下にあるため、リアル店舗の7ヵ所すべてで顧客データを分析している。

 永井氏が、父親の経営するクレストに入社したのは10年前のことだ。その間に行った改革は営業のデジタル化や新規事業開発など、多岐にわたる。もともと店舗や施設に納品する広告看板を制作するだけの“単なる看板屋”でしかなかったクレストの売り上げは、永井氏の入社後4年で3倍になった。その後、二代目社長となった永井氏は、複数の企業を買収し、事業の多角化を進める。ついには、看板という商材を、リアル店舗で顧客の行動を解析できる“計測ツール”へと変革させた。